とても有名なおとぎ話、『三匹の子豚』のあらすじを紹介します。英語のタイトルは、The Three Little Pigs です。まあ、誰でも知ってる話です。
昔からある民話ですが、この話をはじめて出版した人は、ジェイムズ・オーチャード・ハリウェル=フィリップス(イギリスのシェイクスピアの研究家)で、1843年に『Nursery Rhymes and Nursery Tales』に収録した時だそうです(Wiki情報)。
今回は、その話をもとに、イギリスの民俗学者で、童話を収集したジョセフ・ジェイコブスのバーションを紹介します。このバージョンが、現在、もっともよく知られている 『三匹の子豚』 です。
自立を促される3匹の子豚
あるところに年老いた雌豚がいました。母豚は、貧乏で子供を養えなかったので、息子の子豚3匹を、「自活しなさい」と言って、無理やり家から出しました。
長男の豚は、道で会った人から、藁(わら)をもらって自分の家を建てました。オオカミが豚の匂いをかぎつけてやってきて、扉をノックします。
「子豚さん、子豚さん、入れてくださいな」
しかし長男が断ったので、オオカミは、藁の家を吹き飛ばし、長男を食べてしまいました。
次男は、道で会った人から、エニシダの木をもらい、それで家を建てました。やはりオオカミがやってきて、木の家を吹き飛ばしてしまい、次男も食べられてしまいました。
吹き飛ばない三男の家
三男は、道で会った人から、レンガをたくさんもらい、それで家を建てました。オオカミがやってきて、前と同じ要領で、この家を吹き飛ばそうとしましたが、吹いても吹いても、びくともしません。レンガですから。
オオカミはひじょうに悔しい思いをし、どうしても三男を食べたかったので一計を案じました。
カブ畑に誘うオオカミ
オオカミは、この近くにカブがいっぱいなっている畑があるから、一緒に行ってみない? と三男を誘います。
「どこ?」
「スミスさんの畑だよ。明日の朝、6時に迎えに来るから一緒に行こう」
「わかった」
三男は承諾しましたが、オオカミの裏をかくため、5時起きして、1人でカブの畑に行き、たっぷりカブをとって、6時前に自宅に戻りました。
リンゴ狩りに誘うオオカミ
翌朝、6時にやってきたオオカミは、三男がすでにカブを取り、鍋で煮たことを知り、とても腹を立てました。しかし、もう一度、今度は、リンゴ狩りに誘いました。
「僕、いいリンゴの木があるところ、知ってるんだ」
「どこ?」
「メリーガーデンの向こうさ。よかったら一緒に行かない? 明日の朝、5時に迎えに来るよ」
三男は、翌朝、4時起きして、リンゴを取り、5時に間に合うように帰りました。が、思ったより時間がかかって、ギリギリになってしまい、戻ったら、すでに自宅の前にオオカミがいました。
三男は、恐怖でいっぱいになりましたが、取ってきたリンゴを、「これ、あげるよ」と放り投げ、オオカミがリンゴを取りに行っているすきに、家に入りました。
市に誘うオオカミ
翌日、オオカミは、「明日の午後、市(いち)に行かない?」と三男を誘いました。今度は、3時に迎えに来ると言います。
三男は、いつものように承諾をして、翌日、1人で早めに市に行き、バターを作る撹拌機(ミルクをバターにするもの・樽です)を買って家路につきました。
参考画像:バターを作る撹拌機
向こうからオオカミがやってくるのを見た三男は、一瞬、どうしたらいいのかわかりませんでしたが、結局、撹拌機に入って、ごろごろと丘を転がっていきました。これを見たオオカミは、ものすごく怯え、家に逃げ帰りました。
オオカミの最後
後日、オオカミが、樽が転がってきて怖かった話をすると、三男は、「それは自分だ、市で撹拌機を買って、中に入って転がって帰ったんだ」と、告白しました。
オオカミは、ものすごく頭に来て、「今度こそ、おまえを食べてやる、煙突の中から家に入ってやるから」、と宣言します。
これを聞いた三男は、ふた付きの鍋に水を入れ、かまどにかけてぐらぐらとお湯を沸かします。オオカミが煙突から降りてきたその時に、三男が鍋のふたを取ったので、オオカミは鍋の中に落ちました。
すぐに三男は、鍋にふたをかぶせ、オオカミを煮て、夕食に食べました。その後、三男は、ずっと幸せに暮らしました。
☆参照した原文(英語)⇒English Fairy Tales – The Story of the Three Little Pigs (by Joseph Jacobs)
3匹の子豚の教訓
3という数字にこだわっている、いかにもおとぎ話らしいこの話には、さまざまな教訓がありますね。
よく言われるのは、藁や木で手っ取り早く家を作ってはいけない。時間がかかっても、レンガをこつこつ積み上げましょう。そのほうが結局、丈夫な家になる、というものです。
しかし、原文を読むと長男や次男が、藁や木を選んだのは、たまたま、そういうものを持っていた人と道であったからです。三男は、偶然レンガを持っている人に会ったのです。
彼はもともと運が強い豚なのかもしれません。
レンガで家を建てるのは時間がかかったと思いますが、その間、オオカミは、できあがるのを待っていたのでしょうか?
「知恵のある者が、力で強引に進もうとする者に勝つ」というのもよく言われる教訓の1つです。
確かに、三男は、いろいろと知恵がまわりますが、嘘つきですよね? オオカミと約束しておいて、いつも自分1人で、1時間早くカブやリンゴを取りに行っています。
これをそのまま教訓にしてしまうと、「約束を破ってもいい、嘘をついてもいい」ということになってしまいます。たぶん相手がオオカミなら、嘘をついてもいいということなんでしょう。童話に出てくるオオカミは、「悪者」と決まっていますから。
つまり、悪者相手なら、不誠実にふるまってもいいのです。嘘をついたり、約束を破ることは、正当防衛の1つなのです。こういうこと、今でも、国同士の争いでありますね。
一番、ためになる教訓は、「欲張ってはいけない」でしょうか。オオカミは、長男と次男を食べたところで、満足するべきだったのです。上の二匹は、たやすく手に入ったので、オオカミは、調子にのって三男も食べたいと思ったのでしょうね。
さらに、オオカミは、詰めが甘すぎました。3度も自分の裏をかいた三男に対して、すっかり頭に来たオオカミは、「おまえを食べてやる。煙突の中から入るぞ」と計画をそっくりそのまま話します。
これまでの経緯から、そんなことを話したら、また裏をかかれると想像つかなかったのでしょうか?
きっとオオカミは、あまりに頭に来たので、これをするとこうなる、という思考ができなかったのでしょう。冷静さに欠けていたわけです。何か計画するときは、冷静に行い、それが悪だくみなら、誰にも言わないのがベストです。
☆ジョセフ・ジェイコブスが収集したほかのお話⇒ジャックと豆の木(イギリスの伝承童話)のあらすじ。
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