火の鳥とワシリーサ姫(ロシアの民話)のあらすじ。

馬 その他の物語

The Firebird and Princess Vasilisa(火の鳥とワシリーサ姫)というタイトルのおとぎ話を紹介します。ロシアの話で、原題は、Жар-птица и царевна Василиса(Wikipedia にあったのをまるっとコピー)です。

1行のあらすじ

ある弓の射手が、魔力をもつ馬のおかげで、美しい姫と結婚し、皇帝にまでなってしまう話。

火の鳥の羽を拾う

昔むかし、遠いところにある王国に、ある皇帝(ツァー)がいました。この皇帝には、Ivanushkaという、弓の名手が仕えていました。Ivanushka は、イヴァシュカと読むのだと思いますが、日本の翻訳本には、「イワン王子」という名前がよく使われているので、イワンと呼ぶことにします。

イワンの相棒は、強くて足が速い馬です。

ある日、イワンは、道端で、金色の火の鳥の羽を見つけます。馬が、「それを拾うと、ろくでもないことが起きるから、拾っちゃだめ」と言ったのですが、彼は、羽を皇帝に持っていくと、自分の評価があがると思い、馬のアドバイスは無視して拾いました。

無茶を言う皇帝

羽を見せたら、皇帝はとても喜んでくれましたが、今度は、「火の鳥そのものを取ってこい」、とイワンに命じます。しかも、「取ってこなかったら、その場で殺す」というのです。

困ったイワンは、友人の馬のところに行き、事情を話します。

「だから拾うなと言ったのに。まあ、いい。本当の災難はまだこれからだから。安心して、きょうはもう寝なよ」と馬は言いました。

火の鳥をゲットする

翌朝、馬に言われて、イワンは皇帝に、種(たね)がびっしり入った袋をたくさん用意するよう頼みました。皇帝から袋をもらうと、その夜、イワンは道端に、種を撒きました。これで、火の鳥をおびきよせるのです。

案の定、火の鳥がやってきて、うれしそうに種をついばんでいるところを、イワンは、袋をかぶせてつかまえ、皇帝に献上しました。

皇帝はとても喜んでくれましたが、またイワンに難題を出しました。

「とても美しいと世間で評判のワシリーサ姫と結婚したいのだ。ここに連れてこい。さもなければ、おのでお前を殺す」

困ったイワンが馬に相談すると、「う~ん、まあ大丈夫だよ。本当の災難はまだこれからだから」と馬は言いました。

ワシリーサ姫を誘拐

翌日、また馬に言われて、イワンは、皇帝に白いテントと、ごちそう(食べ物とワイン)を用意するよう頼みました。皇帝が言われたとおりのものを用意すると、イワンは馬と一緒に地球の真ん中まで行きました。

すると偶然、ワシリーサ姫その人に会ったのです。

イワンはすぐにテントを設営し、ワシリーサ姫にごちそうをふるまいました。ワシリーサ姫はワインを何杯か飲むと、お酒に弱かったのか眠ってしまいます。眠った姫をイワンは、馬に乗せ、皇帝のところに連れていきました。

ワシリーサ姫の願い

皇帝はとても喜び、姫と結婚しようとしますが、目覚めた姫は、自分が好きでもない男と結婚させられそうになっていることに気づきます。それは嫌だったので、姫は、「結婚する前に、海の底の一番ふかいところに隠されている金の指輪を取ってきてください」と皇帝に頼みます。

もちろん、皇帝は、イワンに指輪を取りに行かせます。困ったイワンが馬に相談すると、馬は「う~ん、まだまだ本当の災難はこれからさ。まあ、僕にまかせて」と言いました。

ザリガニと出会う

翌日、イワンは馬に乗って、ワシリーサ姫と出会った場所に向かいました。実は、この近くに海があり、そこで、赤ちゃんのザリガニを連れた、大きなザリガニに出会います。

馬は、ひづめで、赤ちゃんのカニを陸地の方に転がし始めました。すると母ガニが、「まあ、やめてくださいまし。赤ちゃんにさわらないで。なんでも言うことを聞きますから」と言います。

そこで、イワンが、海の底にある指輪を取ってくるようカニに頼んだら、母ガニは、すぐに取ってきてくれました。

ワシリーサ姫のさらなるわがまま

指輪を持ち帰ると、皇帝は姫と結婚しようとします。しかし、姫は、皇帝みたいな年寄りと結婚するのはまっぴらでした。そこで、皇帝にこんなことを言いました。

「私は、年取った男と結婚したくありません。あなた、若返って、もっとハンサムになってくださいな。若くハンサムになる方法をお教えしますわ。バスタブを、沸騰したお湯でうめて、そのお風呂に入ってください」。

皇帝は言われたとおり、ぐらぐらと沸騰するお湯のお風呂を用意しましたが、そこに入る勇気がなかったので、イワンに、代わりにはいるよう命じました。命令にさからったら死刑です。

イワンは、「死ぬ前に、友人の馬に会ってお別れをさせてください」、と皇帝に頼みました。皇帝は、これを許します。

馬の魔法

イワンが事情を話すと、馬は、「ご主人さま、泣かないでください。何も怖がることはありません」と言うと、イワンに魔法をかけました。沸騰したお湯に入っても大丈夫でいられる魔法です。

イワンは、ぐらぐらと煮立っているお風呂に入って、そして出ました。前よりハンサムになって。

あまりにハンサムになったイワンを見て、ワシリーサ姫はひと目で恋をします。

ハッピーエンド

この様子を見ていた皇帝が、自分も若くハンサムになりたいと、沸騰したお湯に入ったところ、皮がはがれてすぐに死んでしまいました。

皇帝がいなくなったので、人々は新しい皇帝として、イワンを選出。その後、イワンはワシリーサ姫と結婚し、2人は、じょうずに国を統治したので、人々に尊敬されつつ暮らしました。

☆参考にしたバージョン(英語)⇒The Fire-Bird and Vasilisa

承認欲求をいましめる話?

おとぎ話には、いろいろな魔法使いが出てきますが、この話では、それは馬です。

なぜ、この馬が、これほどまでに主人のために尽くすのかは、私が参考にした話には書かれていませんが、きっとイワンは、ふだん、馬の世話をよくしているのでしょう。

(おとぎ話ゆえ、いろんなバージョンがあります)。

そんなパートナーである馬に、「羽、拾うの、やめとけよ」と言われたのに、皇帝にいいところをみせたいイワンはしっかり拾って、さまざまな災難にあいます。

イワンはすでに弓の名手として、皇帝には大事にされているのに、さらに点数を稼ぎたくて、羽を拾いました。

まあ、彼のトラブルは、すべてこの馬が解決してくれますが、ふつうの人は、魔法使いの馬なんて持っていないので、この話の教訓は、「過度の承認欲求は、トラブルをまねくので、ほどほどに」というあたりでしょうか?

ほかには、道端に落ちているものを拾うときは、よく考えてから(イワンと火の鳥両方とも、落ちているものを拾ってトラブルにあいます)、よく知らない人についていって、お酒を飲んではいけません、熱湯のお風呂に入ってはいけません、本人の意志を無視して、美女と結婚しようとしてはいけません、といった教えを得ることもできます。

ロシアのおとぎ話⇒うるわしのワシリーサ(ロシアのシンデレラ)

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