パドキー(Puddocky、ドイツの民話)のあらすじ。

パセリ その他の物語

ドイツの伝承話、パドキーを紹介します。「パドキー」で検索してみましたが、何も出てきませんでした。もしかしたら、日本ではほかのタイトルで知られているかもしれません。カエルに姿を変えられてしまった美少女が、王子を助ける話です。

簡単な要約

美しすぎたせいで、3人兄弟の王子の争いをひきおこし、魔女にカエルに変えられたパセリ(という名前)の美少女が、パドキーというカエルとして、三男の王子を助け、結ばれる話。

パセリが大好きな少女

昔あるところに貧しい女がいました。この女には、「パセリ」という名の娘がいました。娘はパセリが大好きで、それ以外は食べないから、パセリと呼ばれていました。

パセリの母は貧乏なので、パセリをたくさん買うお金がありません。しかし、パセリはとてもきれいな子だったので、子供可愛さに、母は、近所の魔女の庭から、パセリを盗んでいました。

あるとき、この盗みが発覚し、魔女は母親に、パセリを自分によこせというオファーを出します。そうすれば、パセリは思う存分パセリを食べられるから、と。

母はこの申し出に喜び、パセリは魔女と住むことになりました。

パセリ、カエルになる

ある日、パセリの住む街の王子さま3人兄弟が、外国から戻り、窓ぎわで、美しくて長い黒髪を、櫛でといているパセリを見て、恋に落ちました。3人とも、パセリを妻にしたいと思いましたが、そのことをパセリに告げる前に、お互いに嫉妬心をもやし、剣で戦いはじめました。

3人が大騒ぎして戦っているのを聞いた魔女は、「もちろん、これはパセリのせいじゃ! あの娘が美しすぎるのが問題だわい」と言って、パセリを醜いヒキガエルに変えてしまいました。

ヒキガエルに姿を変えたパセリは、すぐにどこかへ消え、ケンカの原因がなくなった王子たちは、剣をふところにおさめ、仲なおりました。

王さま、跡継ぎを決めかねる

しだいに年老いてきた王さまは、3人の息子のうち誰かに王位をゆずりたいと思いましたが、誰に自分をつがせるか決めかねていました。

「おまえたちのうち誰かに王位をつがせたいが、3人とも愛しているから、誰にするか決められないのだ。しかし、もっともふさわしい者、賢い者に、国をおさめてもらいたい。

誰にするか決めるために、これから3つの課題を申し渡す。もっとも、すぐれたパフォーマンスを見せた者に私は王位をゆずる」。

こう王さまは言って、最初の課題をだしました。

それは、王さまの金の指輪の中を通るほど、きめ細かいリネンの布を100ヤード持ってくることです。

課題1:指輪の中を通るリネンを持って来る

兄2人は、たくさんの家来をつれて、リネン探しに出発。末弟は1人で出かけました。すぐに、道が2つにわかれている場所に出ます。

兄2人は、人通りの多い道を進みましたが、末っ子は暗くて寂しい道を選びました。兄2人は、見つけたリネンをかたっぱしから馬車に積み込み、城に戻りました。

末っ子は、暗い道を何日も歩きましたが、どこにもリネンはありません。疲れはてた彼は、ある橋のところまで来て、川岸に座りこんで、ためいきをつきながら、自分の運命を憂えていました。

突然、沼のようにどろどろとした川からヒキガエルがでてきて、末っ子の向かいに座りました。

カエル:「王子さま、いったいどうされたのです?」

王子:「おまえに話してもしかたがないよ、パドキー。おまえには私を助けることができないからね」。

カエル:「そんなふうに決めつけてはいけません。お困りのことを私に話してください」。

そこで、王子が、リネンの話をすると、カエル(パドキー)は、川に入ると、指より小さなリネンを持ってきました。

カエル:「これをお持ちください。これがあなたをお助けします」。

王子は、そんなちっぽけなものを持って帰る気になれませんでしたが、パドキーの気持ちを傷つけたくなかったので、それをポケットに入れるとパドキーに別れを告げました。

王子が、道をいくあいだに、ポケットに入れたリネンはどんどん重くなり、王子の心は軽くなっていきました。

兄たちのリネンは王さまの金の指輪を通ることができなかったのに、末の王子の持ってきたリネンは、美しくきらめきながら、指輪の間をするすると通りましたし、長さはきっかり100ヤードでした。

王さまは、三男をほめ、兄たちがもってきたリネンは、みな、川に投げるよう家来に命じました。

課題2:くるみの殻に入る犬を連れてくる

次の課題は、くるみの殻におさまるサイズの犬を連れてくることです。

兄たちは、前と同じように、にぎやかな道を行きましたが、末の王子は、暗い道をとおって、まっすぐ、パドキーのいる川に向かいました。

きっとまたパドキーが助けてくれると思ったからです。

「王子さま、お助けします」。パドキーはそう言うと、川に入り、ハシバミの実を持ってきました。

「この実をお持ち帰りください。王さまにこの実を注意深く割るようにおっしゃってくださいね」。

王子は、パドキーに心から礼を言うと、ハシバミの実を城に持ち帰りました。

兄たちは、馬車いっぱいに子犬を連れて帰りましたが、くるみの殻におさまる犬はいませんでした。末の王子がハシバミの実を王さまに渡し、王さまがそれを割ると、中から、とてもかわいい小さな犬が出てきて、王さまの手の上を走りました。

王さまは、また三男をほめ、兄たちが連れてきた犬はみな、川に投げておぼれさせるよう家来に命じました。

課題3:もっとも美しい妻を連れてくる

最終課題が出ました。「もっとも美しい妻を連れ帰った者が、私の跡継ぎだ」、こう王さまは言いました。

この課題は前の2つの課題より簡単に思えました。

別れ道のところで、兄たちは、これまでの経過から考え、今度は反対の道を行こうかと一瞬思いました。しかし、もう1つの道は、あまりにうらさびれていたので、そんなところに、探し求めている者がいるわけはないと思い、にぎやかな道を行きました。

末の弟はうつうつとしました。「パドキーはどんなことでも助けてくれるだろうが、今度ばかりは無理だ。どうやってカエルに絶世の美女を探せるというのか? あの川には人間なんて住んでないだろうし」。

王子が、川岸に座って深いためいきをついていると、カエルがやってきました。

カエル:「王子さま、どうされたのです?」

王子:「ああ、パドキー、今回は、おまえには無理だ」。

カエル:「そんなこと言わずにおっしゃってください。やってみなければわかりません」。

そこで王子はパドキーに、課題3の話をしました。「王子さま、お助けすることができます。お城にお帰りください。私もすぐに後をついて参ります」。

こう言うとパドキーは川に入っていきました。

パドキーの正体

王子は、パドキーが自分を助けるなんて信じられませんでしたから、とぼとぼと歩き始めました。すると、後ろから音がします。見ると、6匹のドブネズミが、ボール紙で作った馬車を引いてやってきました。

馬車の前には、ハリネズミが2匹陣取り、御者のハツカネズミもいます。馬車の後ろには従僕のカエルが2匹いました。

馬車の中には、パドキーがいます。王子の横をとおりすぎるとき、パドキーは、王子に、投げキッスをしました。

2つの課題はちゃんとできたのに、最後でしくじるなんて、と王子はがっかりしていたので、パドキーの馬車をしっかり見ていなかったし、その、へんてこな姿を笑う余裕もありませんでした。

しかし、パドキーの馬車が角をまがり、王子もあとを続いてその角を曲がると、王子は、びっくりし、笑顔になりました。そこを進むのは、立派な馬にひかれた美しい馬車。美しくよそおった御者や従僕もいます。

そして、馬車に座っているのは、王子が見たこともないような美しい女性、いや、1度見たことがあります。以前、恋い焦がれたパセリが座っているではないですか。

馬車は王子の前に止まり、従僕が扉をあけ、王子はパセリの隣に座りました。王子は、パセリにお礼を言うと、いかに自分がパセリを愛しているか、告白しました。

兄たちは、たくさんの女性を連れ帰っていましたが、パセリの美しさに勝てる人は1人もいません。

王さまは、末の王子の手柄をよろこび、息子と義理の娘となる人を抱き寄せると、王国を彼に継がせると宣言しました。兄たちが連れてきた女性たちは、リネンや犬同様、川に捨てられ、おぼれました。

王子はパドキーと結婚すると、国をおさめ、2人で末永く幸せに暮らしました。

原文はこちら⇒The Green Fairy Book: Puddocky

アンドルー・ラング世界童話集

パドキーは、アンドリュー・ラング(1844-1912)の『みどりいろの童話集』(Green Fairy Book 1892年)に収録されており、この作品で、英語圏に紹介されました。

アンドリュー・ラングはイギリスの詩人、小説家、民俗学者で、民話の収集家としても有名です。

彼の、タイトルに色をつけた童話集は、全部で12巻あり、それぞれに、グリム童話をはじめ、世界のいろいろな民話が入っています。

パドキーは、単体ではあまり有名でないかもしれません。

お似合いのカップル、王子とパドキー

この物語、冒頭は、ラプンツェルによく似ています。

ラプンツェル(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

魔女がいきなりパセリをカエルに変えたのは、パセリの美しさに嫉妬したのかもしれません。パセリは何も悪いことはしていませんから。母親はパセリ(植物のほう)を盗むという悪さをしていましたが。

童話で、カエルに変えられるのは、たいてい王子さまなのに、この話では、美女がカエルに変えられるところがおもしろいです。

しかも、このカエルは、不思議な力をもっていて、王子さまを助けます。というか、最後に美女に戻れるなら、もっと早く人間に戻ればいいのに、と思いますが、パドキーが、美女に戻れたのは、王子さまの存在があったからこそなのでしょう。

この王子さまは、兄2人とは違い、1人でわざわざうらさびれた道を行くし、醜いヒキガエルが相手でも、気にせず、対等に話をします。

つまり、彼は、ものごとの見かけにはあまりこだわらないのです。

カエルが、ちっぽけなリネンを差し出したときも、王子さまはカエルの気持ちを傷つけたくなかったから、受け取ります。

すでにここで、2人の間に信頼関係が生まれているようです。

醜いカエルとのあいだに友情を築くことができる器のある王子さま。そんな心のひろい王子さまと知り合ったので、魔女の呪いがとけたのではないでしょうか?

あらすじには書きませんでしたが、原文にはパドキーが短い足で必死に走って川に戻る、という描写があります。段ボール箱の馬車や、その馬車から投げキッスを送るカエル。

ユーモラスだし、おうような王子さまと、しっかり者のパドキーのカップルは微笑ましいし、わりと好きな物語です。

ただ、王さまが、兄たちの持ち帰ったものを、人間、動物含めて、川に投げるのは、勘弁してほしいです。

関連したお話⇒ かえるの王さま、あるいは鉄のハインリヒ(グリム兄弟)のあらすじ

偕成社から、文庫で翻訳版が出ています。

この本にパドキーが入っているかどうかはわかりません。レビューによると、この本はオリジナルの収録作品が順番どおりには、入っていないそうです。

たしかに、英語版では、最初の巻は、みどりではなく、ブルーです。

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