赤い靴(アンデルセン、1845)のあらすじ。

赤い靴 アンデルセン童話

アンデルセン童話から、有名な『赤い靴』のあらすじを紹介します。オリジナルのデンマーク語では、De røde Sko、英語では The red shoes です。

超簡単な要約

忙しい人のための1行サマリー:赤い靴に魅入られた少女が、不信心な行いをし、自分の意志とはうらはらに、踊り続けるが、改心したので天に召される話。

貧しいはだしの少女

あるところに美しいカーレンという少女がいました。カーレンはものすごく貧乏だったため、夏は素足。冬場は木靴をはいていたので、足は赤くなっていました。

少女を気の毒に思った靴屋のおかみさんが、残り物の赤い布切れで靴を作ってくれました。カーレンがはじめてその靴をはいたのは、自分の母親の埋葬の日。葬式にはふさわしくない靴だけど、カーレンはほかに履く物がありませんでした。

ある金持ちの老婦人が、棺のあとを歩くカーレンの姿を見て、気の毒に思い、カーレンを引き取りました。

カーレンは赤い靴のおかげでこの幸運が舞い込んだと思いました。

プリンセスの赤い靴

老婦人は、カーレンの靴はみすぼらしいと言って、燃やしてしまいました。カーレンは新しい服を買ってもらい、読み方や裁縫を習いました。人々は、カーレンはかわいい、と言いましたが、カーレンの鏡は、「かわいいというより、あなたは美しいわよ」と言いました。

たまたま、カーレンは、街にやってきた女王とその娘のおひめさまを見ました。おひめさまは真っ白のドレスを着ていて、アクセサリーはいっさいなし。けれど、とても美しい真っ赤なモロッコシ革の靴をはいていました。赤い靴ほどこの世にすばらしいものはありません。

赤い革靴を買ってもらうカーレン

カーレンが堅信礼(教会の正会員になる儀式)を受ける年になると、老婦人は新しい服を用意し、靴を注文しに、繁盛している靴屋にカーレンを連れて行きました。

靴屋のショーウインドウに美しい赤いレザーシューズがあります。あの日、おひめさまがはいていた靴とそっくりな靴です。靴屋が、伯爵の娘のために作ったものの、足に合わなかったのです。

カーレンがこの靴を履いたらぴったりでした。老婦人はこの靴を買いましたが、目が悪かったので、赤い靴だとは知りませんでした。赤い靴だと知っていたら、老婦人が買うはずはありません。教会に履いていく用の靴なのですから。

赤い靴で教会に行くカーレン

赤い靴を履いて、カーレンが教会に行ったら、みながカーレンの足元を見ました。壁にかかっている肖像画の中の聖職者たちも、自分の靴を見ていると、カーレンは思いました。赤い靴がほこらしく、カーレンは靴のこと以外は何も考えられません。

牧師がカーレンの頭に手をおき、聖なる神の言葉を話しているときも、オルガンがおごそかになっているときも、子どもたちが賛美歌を歌っているときも、カーレンの頭は赤い靴のことでいっぱいでした。

老婦人は皆から、カーレンが赤い靴を履いていたと聞き、カーレンをきつく叱りました。「なんてよこしまなことをするんです。これからは教会へは黒い靴を履いていきなさい!」

また教会に赤い靴で行くカーレン

次の日曜日は聖餐式(せいさんしき)でしたが、カーレンは黒い靴と赤い靴を見比べ、結局、また赤い靴を履いて出かけました。カーレンと老婦人は、教会の戸口で、松葉杖をついた年老いた兵士に会いました。この兵士は赤い長いひげの持ち主です。

兵士は、老婦人の靴のほこりを払うことを申し出て、カーレンも足を差し出しました。

「おお、なんてきれいなダンシングシューズだろう! 踊っているときは、絶対ぬげませんぞ」。兵士はカーレンの靴の底をたたきながら、こう言いました。

老婦人は兵士に1ペニーあげると、教会に入りました。この日も、皆カーレンの赤い靴に注目し、式のあいだ中、カーレンは靴のことを考えていました。

式が終わり、カーレンが馬車に乗ろうとしたその時、例の赤いひげの老兵士が「ああ、なんてきれいなダンシングシューズだろう!」と言うと、カーレンは思わず、踊りのステップを踏みました。いったん踊り始めると、カーレンの意志とは関係なく、足が勝手にダンスを続けました。

勝手に踊る赤い靴

カーレンが、踊りながら教会の角をまがっていったので、御者は馬車で追いかけて、カーレンをつかまえてなんとか馬車に乗せましたが、足は踊り続け、老婦人を蹴りました。カーレンが靴を脱いだら、ようやく踊りが止まりました。

帰宅すると、老婦人は赤い靴を 棚にしまいました。

その直後、老婦人は回復の見込みのない病気になりました。カーレンは老婦人の看病をせねばなりません。

街で大きなパーティが行われることになり、カーレンも招待されました。カーレンは老婦人の看病をするべきなのですが、寝ている老婦人を見て、「どうせ治らないのだし」と思い、赤い靴を履いて、パーティに行きました。

パーティでは、カーレンの足はカーレンの思うのとは反対の動きをし、勝手に外に出て、街中を踊り続け、暗い森へ出ました。

もうどうにも止まらない

森でまた赤いひげの兵士に会いました。「ああ、なんてきれいなダンシングシューズなんだろう!」

こわくなったカーレンは、靴を脱ごうとしましたが、足にぴったりくっついて脱げません。カーレンはいつまでも踊り続けます。野を越え、谷を越え、 昼も夜も、晴ていても雨が降っていても。

墓地にたどりつき、疲れきったカーレンは牧師の墓に座ろうとしましたが、足は止まりません。もうカーレンは休むことができないのです。

カーレンが教会の戸口まで踊っていくと、長くて白いマントを来た天使がいました。手には、光るするどい剣を持っています。天使がカーレンに言いました。

「いつまでも踊るがいい! 赤い靴で、青く冷たくなるまで、肉がそげて骨になるまで。家から家へ。虚栄心の強い子供がいたら、その家のドアをたたくのだ。子供が怖がるまで。いつまでも踊り続けるのだ」。

「お許しください!」

天使の返事を聞く前に、足は勝手に教会から出ていきました。

足を切り落としてもらうカーレン

その後もどんどん踊り続け、ある朝、カーレンは見覚えのある場所に来ました。老婦人の棺が運び出されていきます。カーレンはひとりぼっちになったのです。しかも、天使に呪いまでかけられて。

ぼろぼろになりながら カーレンは踊り続け、ある日、首切り役人の家のドアをたたきました。

「足を切り落としてください。首は切らないで。そうすると、悔い改めることができません」。

カーレンが自分の罪を役人に告白すると、役人はカーレンの両足を切り落としました。赤い靴をはいた足はそのまま踊って、森のほうへ行きました。

役人はカーレンに木の義足と、松葉杖をくれ、罪人が罪を悔いるときの賛美歌を教えてくれました。

信心深くなったカーレン

改心したカーレンは教会へ行こうとしましたが、赤い靴をはいた足が目の前にでてきたので、怖くなって、そのまま家に戻りました。

1週間、自分の罪を悔い、涙をたくさん流したカーレンが、次の日曜に、また教会へ行くと、また赤い靴をはいた足が出てきたので、カーレンはそのまま逃げ帰りました。

カーレンが、牧師の家へ行き、女中として働かせてくれるよう頼むと、気の毒に思った牧師の妻がやとってくれました。

カーレンは牧師館で誠心誠意働き、夜は、牧師の読む聖書の言葉を静かに聞きました。子どもたちはカーレンになつきました。子どもたちが洋服のフリルやひだ飾りの話をしたり、女王さまのようにきれいになりたい、と話しているときは、カーレンは首を横に振りました。

キリスト教的ハッピーエンド

次の日曜、牧師一家がカーレンを教会に誘ったら、彼女は目に涙をためて、断りました。カーレンが、自分の小さな部屋で、賛美歌の本を読んでいると、教会のオルガンの音色が聞こえます。

「ああ、神様。どうぞお助けください!」

泣きながらカーレンがそう言うと、太陽の光がさして、白いマントを着た天使が目の前に立ちました。いつかの夜、教会で会った天使ですが、きょうは、剣ではなく、バラの花がいっぱいついた緑の枝を持っています。

天使がその枝で、天井をさわると、黄金の星が光り、天井が高くなり、壁をさわると、横にひろがり、オルガンが見えます。

牧師の肖像画も見え、教会で祈り、賛美歌を歌う人たちも見えます。カーレンの部屋が教会になったようであり、カーレンが教会に運ばれたようでもあります。

「カーレン、ほんとうによく来たね」、人々がいいます。

「神様の御慈悲のおかげです」、カーレンは答えます。

オルガンの音や歌声がやさしくひびき、窓から太陽の明るい光がカーレンに注ぎます。光で満たされたカーレンは、うれしく安らかな気持ちでいっぱいです。

カーレンの魂は、光にのって天に昇りました。そこでは、カーレンに赤い靴のことをたずねる人は誰もいませんでした。

原文はこちら(英語)⇒ H.C. Andersen : The Red Shoes

罪と悔悛(かいしゅん)の物語

「赤い靴」というと、勝手に足が踊り続け、足を切り落としても、切った足がまだ踊っている怖い話、ホラーだ、というイメージを持っている人も多いでしょう。

ですが、原文(英語ですが)を読んでみると、教会や信仰がフィーチャーされた、キリスト教の倫理観を伝える話に思われます。

信仰がない私のような人間にはピンと来ませんが、虚栄心の強すぎたカーレンは、その罪のせいで、踊り続けるという罰をうけ、その罪を悔いたら、神さまに許され、天に召されたのです。

靴や足にこだわるアンデルセン

アンデルセンは貧しい靴職人の息子だったせいか、靴にこだわっており、足を切ったり、けがをして松葉杖をしている人間が出てきたりと、足にもこだわっている気がします。

まあ、シンデレラも靴の話ですし、

長靴をはいた猫も、飼い主にまず靴を所望しています。

昔のヨーロッパの人にとって、靴は富と地位の象徴であり、カーレンのケースのように、虚栄心や欲望をかりたてるものでもあったのでしょう。

この話には赤い靴が3足でてきます。最初の靴は幸運を呼び、おひめさまの靴は、カーレンに分不相応な欲望の火種をつけ、3足目の靴は、カーレンを破滅させ、再生させます。

どこまでも靴がひっぱるストーリーと言えましょう。

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