ロバの皮(シャルル・ペロー)のあらすじ

ロバ ペロー童話

ペローの童話、ロバの皮(Peau d’âne)のあらすじを紹介します。この童話は、まず、1694年に刊行された小冊子に、韻文(詩のような感じ)の形で世に出ました。

その後、1781年になってから、眠れる森の美女やサンドリヨン、赤ずきんで有名な童話集と一緒におさめられ、「コンプリート・エディション」という形で出されたそうです。

しかし、日本のペローの童話集には、通常、ロバの皮は入っていません。

王妃の遺言

昔、美しい王妃と幸せに暮らす、有力な王さまがいました。2人にはこれまた美しい王女さまがいました。王さまの人生は順風満帆でしたが、ある日、王妃が病気で死んでしまいました。

死ぬ前に王妃は、「あなたは、私よりも美しくよくできた方と結婚なさいませ」と王さまに遺言しました。しかし、王妃はとても美しかったので、そんな人はなかなかいません。

娘に結婚をせまる王さま

王さまは、自分の娘なら、亡き王妃より美しいと発見し、娘と結婚しようとします。

そんなことはしたくない王女は、仙女に助けを求めます。仙女は、あつらえるのがむずかしいドレスを結婚の交換条件として提示せよ、と指示します。王女さまは、ちょっとこったドレスを3回、王さま(父親)にねだりましたが、いつも王さまはドレスを調達しました。

困った王女に、仙女は、「それならばロバの皮をねだりなさい」と言いました。このロバはお城で飼っているスペシャルなロバです。どこがスペシャルかというと、金貨のふんをするのです。

これまで、王さまが特殊なドレスを用意できたのも、金貨をだすロバがいたからこそです。いかに恋に狂った王さまでも、貴重な財源のロバを殺しはしまい、と仙女は思ったのです。

ロバの皮を着て逃げる王女さま

しかし、王さまはあっさりロバを殺し、その皮を娘に与えました。「もはや、これまで」と王女は、ロバの皮をかぶって、お城から逃げ出しました。

王女は、よその国で、なんとか就職し、農場で働いていましたが、いつもロバの皮をかぶっており、顔も手足も汚れ、とても汚い姿でした。

あるとき、泉で、自分のみすぼらしい姿を見た王女は何か月ぶりかでお風呂に入り、もとのようにきれいにしました。

王子さまに見そめられるロバの皮(王女)

王女はもともと、お姫さまなので、美しく装う楽しみがよみがえってきました、部屋の中で王さまにもらったきれいなドレスを着て、悦に入っているところを、たまたま通りがかった別の国の王子が鍵穴からのぞき、王女に心を奪われました。

王女のそばに行きたくてたまらなくなった王子が、だまってドアを開けて中に入ったので、王女は驚いて逃げました。

恋の病にかかる王子さま

王子が王女を探すため、そのあたりに住む人に、「あの家に住んでいる人は、なんという名前のどんな方なのだ?」と聞いてみたところ、みな、「ああ、あそこに住んでいるのは、ロバの皮と呼ばれる、そりゃあ汚い女中ですよ。農場で働いていて、もうほんっとに汚いんです」と言います。

この話を信じられなかった王子でしたが、誰に聞いてもそういうので、らちがあかないと思い、いったんお城にもどりました。

王子は、鍵穴から見た美しい女性に激しい恋をして、とうとう病気になってしまいました。

ロバの皮(王女)のケーキをねだる王子さま

一人息子の王子が重い病にかかってしまい、母の王妃はとても心配しました。苦しむ王子の枕元で、「ああ、お前を助けるためには私もお父様もなんだってしますよ。教えておくれ、お前の望みは何なのですか?」こう 王妃は 言いました。

王子は、「それならば、お母さま、私は、ロバの皮と呼ばれる娘の作ったケーキが食べたいのです。それはそれは汚い娘なのですが」。

王妃は、息子の願いを叶えるために、ロバの皮が作ったケーキを持ってくるように、彼女の働いている農場に、使者を送りました。

ケーキの中に指輪を落とすロバの皮(王女)

ケーキの話しを聞いた王女(ロバの皮)はとても喜びました。ロバの皮も王子のことが気になっていたのです。ロバの皮は窓からハンサムな王子を見ていて、好ましく思っていた、とか、人から王子のことを聞いて、好意を抱いていた、という人もいます。

真相はどうあれ、お近づきになりたいと思っていた王子のために、王女は、最高級の材料を使って、ケーキを作りました。そのとき、わざとなのか、そうでないのかはわかりませんが、王女は、指にはめていた指輪をケーキの生地の中に落としました。

指輪の持ち主と結婚するという王子さま

使者からケーキを受け取ると、王子はむさぼるようにそれを食べました。そばに仕えていた医者が心配するようなスピードで。

もう少しでケーキを食べ終わろうかというとき、王子はもう少しで指輪のせいで窒息するところでした。王子は指輪をしげしげと眺めました。それは金のリングにエメラルドがついた美しい指輪でした。

王子はケーキのことはすっかり忘れ、その指輪に魅入られ、何度もキスをすると、自分はこの指輪の持ち主と結婚する、と宣言しました。

指輪の持ち主探し

王と女王は、王子のために指輪の持ち主を探すことにしました。その指輪はいかにも高級な品物だったので、2人は、近隣の姫君や高貴な身分の女性を呼び、指輪をはめてもらいました。

しかし誰の指にも合いません。

王子は、「ケーキを作ってくれたロバの皮を呼んでいないではありませんか!」と言いました。

その場にいた人は、「は? あんな汚いロバの皮が、この指輪の持ち主であるわけがないですよ。はははははは」と笑いました。

「すぐにロバの皮を呼べ!」

王さまの一言で、家来は、内心あきれながらも、ロバの皮を連れに出かけました。

王子さまと王女さまの幸せな結婚

この先は書かなくてもわかるでしょう。美しい王女の出で立ちで、お城に出向いたロバの皮の指に、指輪はぴったりはまりました。

王子は、ロバの皮に結婚を申し込みましたが、ロバの皮は父親の許しがなければできないと言いました。そこで、ロバの皮の父親である王を、王子の相手の名前は伏せて、結婚式に呼ぶことになりました。王はいつのまにか、娘への執着はなくなり、別の女性と結婚していました。

久しぶりに再開した親子は喜びあい、父は娘の結婚を誰よりも祝福しました。

王子と王女は結婚し、いつまでも深く愛し合い幸せに暮らしました。

原文はこちらを参照しました⇒Peau d’âne – Charles Perrault | touslescontes.comTous les contes – Contes, récits et légendes de tous les pays

意外におもしろいロバの皮

近親相姦の話ともいえるロバの皮は、日本ではあまり有名でないかもしれません。ですが、かなりおもしろい話です。中盤以降はサンドリヨンと似ています。

金貨のふんをするロバというのが笑えます。この金貨は、ルイ金貨という、ルイ13世以降のルイ王の肖像の入った金貨です。

この話が、ペローの生きていた頃の話ならば、ルイ14世の顔のついた金貨がロバのお尻から出てくるのです。

また、王女が父親の王にねだるのは、空(天候)をあらわしたドレス、太陽をあらわしたドレス、月をあらわしたドレスです。自然にある美しいものを、布地や宝石で具現化するのです。サンドリヨンと同じように、ロバの皮でも、ペローはドレスにこだわっています。

そもそも、ロバの皮をかぶって逃げたり、生活したりするのがおもしろいし、指輪で窒息しそうになる王子のエピソードも、よくそんなこと考えるなあ、と思ってしまいます。機会があったら読んでみてください。

この本には、ロバの皮も入っています。

映画化もされています。

グリム童話にもよく似た話があります。

コメント

  1. masausa より:

    おもしろすぎる!「ロバの皮」という名前だけは見聞きしていましたが、内容は本日はじめて知りました。シンデレラがあまりにもの有名すぎるので新鮮に感じるだけなのかもしれませんが。
    子供に語って聞かせるには大人の常識からしてちょっと説明に困ってしまうかもしれないかもしれませんが、人生を長く生きた人間ほど伝承のツボにハマってしまいそうな話ですね。
    古今東西全世界で民話収集や研究している人の楽しさが伝わってきそうなシロモノですね。

    • pen より:

      意外におもしろい話ですよね。絵本にしても映えると思います。
      でも、シンデレラに比べると、日本ではあまり話題になりませんね。
      まあ、赤ずきんちゃんだってけっこうきわどい話だし。
      こういうの、ふつうに民話にあったのでしょうね。

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