女優のシェリー・デュバルがプロデュースした1980年代のアメリカのテレビシリーズ、フェアリーテール・シアター(Faerie Tale Theatre)の、『赤ずきん』を見ました。
フェアリーテール・シアター は、童話を、わりと有名な俳優をつかってドラマ化(実写)したものです。
赤ずきん(フェアリーテール・シアター)基本情報
- グリム兄弟の赤ずきんの系統(最後に赤ずきんとおばあさんは、オオカミのおなかの中から助けだされるので、ペローの赤ずきんではないです)。
- 主演:マルコム・マクダウェル(オオカミ)、メアリー・スティーンバージェン(メアリー/赤ずきん)、フランセス・ベイ(おばあさん)、ダイアン・ラッド(赤ずきんの母)
- コメディふうの『赤ずきん』です。
- このシリーズは配役が豪華なのが特徴です。ダイアン・ラッドは実生活ではローラ・ダーンのお母さんです。
あらすじ
メアリーは、木こりのお父さんと、家事全部において有能なおかあさんの大事な一人娘。もう子供ではないけど、大人とも言えないと劇中で言っているので15歳ぐらいの設定か? 親に大事にされすぎている。
両親は、いつまでメアリーを子供扱いして、自由にさせてくれず、メアリーは、たまにおばあさんの家に行く以外は外出したことがないし、友達もいない。
お父さんの弟子のクリスと、メアリーがちょっと話をしただけで、お父さんに引き離される。クリスはおばあさんの家の近所に住んでいる。
メアリーの家とおばあさんの家のあいだにある森に、あるオオカミがやってきてキャンプを始める。彼は、仲間たちと暮らすのにうんざりして一人(一匹)で出てきたのだ。食べ物がなくておなかをすかせている。
メアリーの誕生日に、おばあさんは真っ赤な頭巾をくれる。この夜、メアリーはクリスといい雰囲気になるが、お父さんに見つかり、クリスは首になる。
パーティの次の日(だと思う)、クリスがやってきて、メアリーにおばあさんが病気だと伝える。メアリーは母の用意したごちそうをかごに入れ、赤ずきんを身に着け、おばあさんのお見舞いに行く途中、森でオオカミに出会う。このあとは、よくある赤ずきんのストーリー展開。
見どころはマルコム・マクダウェルのオオカミ
一番の見どころは、マルコム・マクダウェルの演じたオオカミだと思います。このオオカミ、一人でいろいろなことをしゃべるんですが、そのセリフがおもしろいです。肉を食べていないから、容貌が衰えてきたと、鏡を見ながら言ったりします。
ほかの人がアメリカ英語をしゃべっているのに、一人だけブリティッシュ英語で(彼が、イギリス人だからなのですが)、気取ったオオカミです。
マクダウェルは『時計じかけのオレンジ』(1971)のアレックス役で、世界中に名を知られた俳優で、このドラマを撮影した当時はすでにスターでした。
若い頃の彼は、鼻に特徴があるものの、なかなかハンサムですが、このドラマでは、オオカミのメイクをしているので、顔はよくわかりません。目をギョロギョロさせて、楽しそうにオオカミを演じています。
『赤ずきん』の場合、オオカミが重要な役どころなので、オオカミをどんなふうに処理するか、誰が演じるかで、作品の完成度が変わります。
オオカミをそのまま出すか、ふつうの人間にするかの選択肢がありますが、フェアリーテール・シアターは、童話を忠実に実写化するのがポリシーのようなので、このドラマでは、オオカミはオオカミとして出てきます。
オオカミを演じるために、着ぐるみを着てしまうと、かわいくなってしまうから、顔だけオオカミメイクで、あとは人間ふうに服を着せ、しっぽをつけるというあたりに落ち着いたのでしょう。
おばあさんもおもしろい
ドラマの前半は、童話の『赤ずきん』とは関係ないオリジナルの脚本で、メアリーとその家族を見せています。ここはちょっと退屈ですが、おばあさんはおもしろいです。
このおばあさんも、オオカミ同様、家で一人芝居しているシーンがあり、とぼけた味があって笑えます。しかも、このおばあさん、わりと強くて、メアリーの誕生日パーティに行く時、、森でオオカミに会ったときは、杖で撃退します。
風邪をひいているところに、オオカミがたずねてきたときも、鉄砲を向けるのですが、残念ながら銃弾が入っていませんでした。
年をとりすぎている赤ずきん
赤ずきんを演じたメアリー・スティーンバージェンは、すでに1980年にアカデミー助演女優賞やゴールデングローブ賞を受賞している名女優ですが、赤ずきんを演じるには年をとりすぎています。
彼女は、1953年生まれなので、このとき30歳です。30歳なら、どちらかというと、赤ずきんのお母さんの年齢に近いのでは?
当時、 スティーンバージェンは、マルコム・マクダウェルと結婚していたから、彼女が赤ずきんを演じたのでしょうか?
赤ずきんは、子供ですから、いくら年をとっていても、ティーンエイジャーにしておいてほしかったです。
しかも、メアリー・スティーンバージェンは背が高く、173センチです。マルコム・マクダウェル(174センチ)とほぼ同じ背丈なので、オオカミが丸呑みするのも、リアリティがありません。まあ、そもそもオオカミは人間を丸のまま飲み込んだりはしませんが。
もう少し若くて、小柄でぽっちゃり系の女優を使ったら、赤ずきんらしくなり、オオカミとのやりとりも、もっと緊迫感が出たでしょう。
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