童話の実写ドラマを放映していたアメリカのテレビ番組、フェアリーテール・シアター( Faerie Tale Theatre )から『美女と野獣』を見ました。まあまあのできですが、あまりにもコクトーの作品にそっくりなので、もう少しオリジナリティを出せばよかったと思います。
作品情報
- 監督:ロジェ・ヴァディム
- 原作:『美女と野獣』
- 主演:スーザン・サランドン(ビューティ)、クラウス・キンスキー(ビースト)、姉の1人としてアンジェリカ・ヒューストンが出演。
- 1984年8月13日放映
- フェアリテール・シアターの1本。フェアリーテール・シアターについては、以下の記事で多少詳しめに書いています。
あらすじ
フェアリーテールシアターは毎回、原作に忠実に作っているので、このドラマも、わりと原作に忠実です。
ただ、兄は出てこず、3人姉妹で、時間の関係か、父親の船が難破して貧乏になったというくだりはなく、ドラマ冒頭で、何の理由もなく、父親は道に迷って、ビーストの城に行き着き、ごちそうを食べて、翌朝、白いバラを摘みます。
その後の展開は、原作とほぼ同じです。
ロジェ・ヴァディムは才能が枯渇してしまったのかしら?
原作と同じというよりも、このドラマは、コクトーの映画によく似ていて、よく言えば、オマージュ、または、パロディ(?)、悪く言えばパクリだと思います。
ジャン・コクトーの『美女と野獣』には印象的なシーンが多いのですが、そうしたシーンがストレートに出てきます。野獣がシカを見て、耳がピクっと立ち上がるシーンもあります。
まあ、コクトー監督の作品は傑作なので、その後に作られた、『美女と野獣』は大なり小なり影響を受けていますが、ここまでそっくりそのままのドラマを作らなくてもいいと思います。
監督としての姿勢を疑います。それとも、プロデューサー側の意向でしょうか? それとも、アメリカの人は、美女と野獣の原作は、コクトーの映画だと思っていたのでしょうか?
ロジェ・ヴァディム監督は、ドンファン監督とも呼ばれ、若き日のブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーブ、ジェーン・フォンダを妻や恋人にし、自分の映画に出演させていた監督です。
「素直な悪女」など50~60年代は傑作を作っていた人ですが、80年代は、才能がすっかり枯渇してしまったのかもしれません。
ヴァディム監督は1928年生まれなので、80年代半ばは、まだ50代半ばです。しかし、1983年に『さよなら夏のリセ』という映画を作ってからは、88年に、デビュー作の『素直な悪女』を自分でリメイクしたほかは、テレビ用の作品しか作っていません。
これが1本目の人ならおもしろいと思う
とはいえ、元の話がおもしろいので、原作やコクトー監督の作品を知らない人が見ればそれなりにおもしろいと思います。
1時間枠のテレビドラマなので、そんなに予算はかけていませんが、屋敷や庭のセットなど、そこそこ美しいし、コクトーの真似をしているので、室内のシーンもまあ幻想的です。
ビューティ役のスーザン・サランドンは演技派ですし(そんなに深い演技はしていませんが)
ビースト役の、クラウス・キンスキーはもともとが目がギョロッとしたあくの強い演技派俳優なので、ビーストになるには合っています。目に威力があります。
けれども、最後に王子さまになるのは無理があったと思います。クラウス・キンスキーは、ロジェ・ヴァディム監督より年上で(1926年生まれ)、このとき、57歳ぐらいです。
ビーストのときはたくさんアップがあるのに、王子さまのシーンではアップがなく、しかもソフトフォーカスです。
『美女と野獣』の実写映画やドラマを見るたびに思うのですが(まだそんなに本数を見ていませんが)、毎回、最後に、ビーストが王子になったときに、「ビーストのほうがよかったのに」と思ってしまいます。
このドラマでも、スーザン・サランドンが、王子に「あなたの姿に慣れなければいけませんわね」と言っています。
たとえ醜い男でも、突然、美男に変わってしまうと恋人は大いに違和感を感じるものです。「何、この人、突然どこから来たの? 私の愛するビーストはどこへ行ってしまったの?」と思うでしょう。野獣からキラキラ王子さまになったらなおさらです。
このドラマはDVDに収録されています。
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