キャノン・フィルムズという、アメリカのインディペンデントの映画会社が制作した『白雪姫』(実写版)を見ました。原作に忠実な作品です。
Snow White 予告編(1分44秒)
基本情報
- 監督:マイケル・バーツ
- 原作:グリム兄弟の『白雪姫』
- 主演:ダイアナ・リグ(邪悪な女王)、サラ・パターソン(スノー・ホワイト)、ニコラ・ステープルトン(7歳のときのスノー・ホワイト)。主演は全員イギリスの役者です。
- ミュージカル(しかし、後半は音楽が少なくなり、ふつうの映画になります)。
- 劇場公開なしのビデオ映画、83分
- キャノン・ムービー・テールズ(Cannon Movie Tales)シリーズの1本。これは1980年代にキャノングループが、童話を実写化したシリーズです(低予算)。全部で9本ありますが、『白雪姫』はその中でも、できがよい作品と言われています。撮影はイスラエルで行われ、主演は、アメリカかイギリスのメジャーな役者がつとめ、脇役はイスラエルの人です。なぜ、イスラエルなのかというと、キャノン・フィルムズの社長がイスラエル出身だからです。
あらすじ
ほとんど原作と一緒です。予告編がそのまま、映画の要約になっています。
原作と違うのは、冒頭、お供を連れた王子が出てくるところ。
王子が、雪がつもった森の中で、ガラスの棺の中で眠っている白雪姫を見つけて見とれていたら、7人の小人がやってきて、どうしてこんなことになったのか話し始め、そこから白雪姫のストーリーが展開されます。
原作のあらすじはこちらです。
白雪姫が7歳のとき、殺されそうになること、王女が3回、白雪姫を殺しにくること、毒りんごが、半分白くて半分赤い、不思議な色合いをしていること、荷車で運んでいるとき、棺が傾いて、のどからりんごのかけらが取れて白雪姫が生き返ることも原作と同じです。
最後は、原作と違い、鏡が砕け散るとともに、女王も消滅します。
配役はいいと思う
白雪姫の7歳時代が、 83分の半分の40分ぐらい続きます。この子の芝居がうまいです。大人の白雪姫を演じたサラ・パターソンも白雪姫らしいプリンセスです。
王子はちょっとしか登場しませんが、たぶんイスラエルの人で、なかなかハンサムです。白人のなよなよしたタイプより、こういう感じの王子のほうが、私は好きです。『エバー・アフター』のダグレイ・スコットの系統の王子と言えましょう。
女王を演じた、ダイアナ・リグは、60年代のイギリスのドラマ、The Avengersで、エマ・ピールを演じた人で、ボンドガールにもなり、おしゃれな印象がある一方で、シェイクスピアの作品を演じる女優でもあります。
この映画では、いかにも芝居じみた大げさな演技をしています。
衣装や髪型はよく言えばユニーク、悪く言えば悪趣味で、とても世界で一二を争う美女には見えません。
いろいろな扮装をしていて、殺害に行く時も、1度めはジプシーで、2度めは謎の花魁(おいらん)風、日本人(だと思う)。しゃべり方も変えていて、今見ると、人種差別と受け取られかねません。
音楽は今いち
音楽は凡庸で、特にいい曲はありませんし、みな、あまり歌がうまくありません。きのう、『シェルブールの雨傘』を見たので、そう感じてしまうのかもしれません。
印象に残るダンスのシーンもありません。
それと、最初にも書きましたが、後半だんだん歌がなくなっていき、ミュージカルじゃなくなります。殺しに行く時、歌なんて歌っていたら、楽しい雰囲気が出てしまうから、そうなのでしょうが、『シェルブールの雨傘』では、どんなシーンでも歌を歌っていたので、やればできたと思います。
原作を忠実になぞっているだけのような気もする
シナリオですが、ほぼ原作と同じで、無難にまとめてあり、あまり工夫は感じられません。
鏡のフレームに人の顔がはまっていてしゃべるのは、フェアリーテールシアターの白雪姫のまねだと思うし、毒りんごを作るシーンは、ディズニーアニメの白雪姫とそっくりです。
この映画独自の味付けは、お城や、人々が中世の人のような雰囲気で、童話らしいところ、それなのに、王女は、キッチュというか、風変わりというか、不思議なドレスを着て、毒りんごを作るとき、怪しすぎるところです(だんだん、ディズニーの魔女化します)。
両方のイメージが対立して、バランスがくずれています。おとぎ話ふうにするのならば、もう少し女王の奇怪なトーンを下げるべきです。
それと、7人の小人がみな、異様に毛深いのはなぜなのか? まるで『猿の惑星』です。
とはいえ、アメリカのアマゾンではおおむね高評価で、ファンがたくさんいる作品です。私も、毒りんごのシーンではりんごが食べたくなりました。
日本のアマゾンにもDVDが出ていますが、輸入版のはずです。アメリカと日本ではリージョンが違うので買うときは注意してください。
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