親指姫(アンデルセン、1835)のあらすじ。

ピンクの花 アンデルセン童話

アンデルセン童話からとても有名な『親指姫』のあらすじを紹介します。デンマーク語のタイトルは、Tommelise、英語のタイトルは、Thumbelina (サンベリーナ)です。

簡単な要約

忙しい人向け1行サマリー:花から生まれた親指ぐらいしかない小さくてきれいな少女が、ヒキガエルやモグラに結婚を迫られるも、ほかの生き物たちの援助を得て、最終的には花の国で自分とサイズがつりあう王さまと結婚する話。

花から生まれた少女

昔、小さな子どもが欲しいものの、どこにそういう子がいるのかわからない女性が、年老いた魔女に相談しました。

魔女はオオムギの種を女に渡し、これを植えてごらん、と言います。女はお礼に12ペニー払って、帰宅後、種を植えました。

するとチューリップにそっくりだけど、芽のように花びらが固まっている花がはえてきました。女が赤と黄色の花びらにキスをしたら、花がぽんと咲き、まんなかに女の子がいました。

とてもきれいな女の子でしたが、そのサイズは親指ほどです。だからこの子は、親指姫(サンベリーナ)と呼ばれるようになりました。

ヒキガエルに誘拐される

親指姫はピカピカに磨いたくるみの殻(カラ)のべッドに、花びらのふとんをかぶって寝ました。昼は大きなお椀に水を入れた上に、葉っぱを浮かべ、その上に乗って遊びました。

ある晩、ヒキガエルが窓から入ってきて、くるみに寝ている親指姫があまりにかわいいので、息子の嫁にするために誘拐しました。息子のヒキガエルも、親指姫を気に入り、姫が逃げられないように、池に浮かんでいるスイレンの葉っぱの上にくるみのベッドごと親指姫を乗せました。

魚に助けられる親指姫

翌朝目覚めた親指姫はびっくり。しかも、醜いヒキガエル母子がやってきて、自分はヒキガエル息子と結婚することになっていると言うではありませんか。

ヒキガエルは親指姫のベッドを自分の家に持っていってしまいました。ヒキガエルと結婚などしたくない親指姫が、1人で葉っぱの上で泣いていると、小さな魚たちがやってきて、親指姫を気の毒に思い、スイレンの葉の茎をかじって切ってくれました。

魚たちは、「こんなにきれいな女の子が醜いヒキガエルと暮らすなんて、あってはならない」と思ったのです。

親指姫の乗った葉っぱは、どんどん水の上を流れ、彼女は旅人になりました。

コガネムシに誘拐される

途中で白い蝶が、親指姫を見つけ、近寄ってきます。蝶は親指姫のかわいさにまいってしまったのです。親指姫が、自分のリボンの片方を蝶に結びつけ、もう片方を葉っぱに結びつけたので、葉っぱは前よりさらに早く、どんどん進みました。水上スキーの要領です。

すると大きなコガネムシ(may-bug)が飛んできて、親指姫をつかみ、木の上まで連れていってしまいます。コガネムシは木の葉の上に親指姫を乗せます。

コガネムシ(オス)は親指姫がとてもきれいだと思ったのですが、仲間は、この子は足が2本しかないとか、羽がないとか言ってけなします。

「なんて醜い子なのかしら。まるで人間みたいじゃない。お~やだやだ、おぞましい」。

コガネムシのメスたちが、口をそろえてけなすので、ひそかに親指姫をきれいだと思っていたコガネムシ(オス)は、親指姫を手放すことにし、デイジーの花の上に置いて、去っていきました。

野ネズミの家に行く親指姫

夏場は、森の中で、草のハンモックに寝たり、はちみつを食べたりして、1人で気ままに暮らしていた親指姫でしたが、冬になり、これまで美しい歌を聞かせてくれた鳥たちはどこかへ行ってしまいました。

雪が降り始め、寒くて死にそうだし、食べるものもなく、乞食のようになってしまった親指姫は、野ネズミの家のドアをたたきます。

ここには、とてもやさしい野ネズミのおばさんが住んでいて、親指姫をあたたかく迎えてくれました。「あんた、とてもかわいい子ね。冬の間中、ここにいてもいいわよ。でも、部屋の片付けをして、私にお話を聞かせてちょうだいね」。

親指姫は言われたとおりにし、やさしい野ネズミと楽しく過ごしました。

野ネズミにモグラを紹介される

ある日、野ネズミがこう言いました。

「もうすぐ、お客さんが来るのよ。この人は、私なんかよりずっと金持ちで、きれいな黒いベルベットのコートを着てるの。あんた、この人と結婚したらいいわ。そりゃあ幸せになるわよ。でもね、彼は、目が見えないの。彼に、一番いいお話を聞かせてあげなさい」。

親指姫は、この提案には賛成しかねました。このお客さんを隣人とすら感じることもできません。なぜならその人はモグラだったからです。

野ネズミは、いかに、モグラが金持ちか強調しましたが、もぐらは、太陽や花々にはまったく興味がないようです。

親指姫を気にいるモグラ

野ネズミに言われて、親指姫はモグラに歌を歌いました。もぐらは親指姫のスイートな歌声に恋をしますが、控えめな性格だったので何も言いませんでした。

モグラは自分の家から、野ネズミの家まで長いトンネルを掘ったばかりです。「どうぞ、自由にこの道を使ってください。ただ、途中に死んだ鳥がいますが…」。

モグラは口にたいまつをくわえて、ネズミと親指姫を、死んだ鳥のいる場所まで案内しました。それはツバメでした。モグラは、「鳥なんて鳴くだけでなんの役にもたたない」と言い、蹴ったりしますが、鳥が大好きな親指姫はこころを痛めました。

ツバメの看病をする親指姫

「もしかしたら、私に歌を歌ってくれた鳥さんだったかもしれない」。その夜、親指姫は眠れず、わらで毛布を編んで、鳥の死がいの上にかけました。

「鳥さん、さようなら、素敵な歌をありがとう」と親指姫は言い、鳥の胸に頭をのせました。すると、心臓の音が聞こえます。実は、ツバメは寒くて、硬直していただけで、わらの毛布のおかげで暖かくなり、また心臓が動き始めたのです。

ツバメは(親指姫にとっては)とても大きかったので、親指姫はおびえましたが、勇気をだして、自分のふとん(ミントの葉)をかけてあげました。

その夜から、親指姫はツバメの看病を開始し、あいかわらず、衰弱しているものの、 ツバメは 「ありがとう」とお礼を言えるまでになりました。

春になってツバメが去る

春になってほぼ回復したツバメは、親指姫に一緒に来てはどうかと言いましたが、自分を乗せて飛ぶほど、ツバメには体力がないことを親指姫は知っていたので、この申し出を断りました。

「さようなら、さようなら」。そう言ってツバメは飛んでいきました。親指姫は、寂しさでいっぱいでした。

野ネズミが、親指姫に、もう外に出てはいけないし、婚礼の衣装や、結婚後に使う寝具を自分で織るように言います。もぐらは毎日やってきて、夏が終わったら結婚しようと言います。

親指姫はもぐらが嫌いでした。朝や夕方、こっそり外に出て、背が高い穀物の木の合間から見える青空をながめました。戸外はとっても明るくて美しい。親指姫は、去っていったツバメのことを思いました。

モグラとの結婚式の当日

秋になって、親指姫の嫁入り道具の用意ができました。「結婚式は4週間後よ」。野ネズミの言葉に、親指姫は、大泣きし、あんなモグラとなんか絶対結婚したくないと言います。

「何言ってるの。この頑固者、あんないいお婿さんはいないよ。女王だってあんなコート持ってないし。台所は素敵だし、食料庫には食べ物がいっぱいだし。あんな人と結婚できるなんて感謝しなきゃいけないよ」。

結婚式の日がやってきました。もぐらが親指姫を自分の家に連れに来ました。そこは、地中の奥深くで、もう2度と太陽の光を見ることができません。

太陽に別れを告げることを、野ネズミが許してくれたので、親指姫は外にでて太陽の光をあびました。「さようなら、太陽さん、さようなら」。

ツバメがやってくる

親指姫が赤い小さな花に手をさしのべ、「もし、あのツバメさんを見たら、どうぞ、私の愛を伝えてください」と言ったそのとき、当のツバメがやってきました。

親指姫は大喜び。そして、もぐらと結婚するのはいやだとツバメに話しました。

「また寒い冬がやってくるから、僕は遠くのあたたかい国に行きます。僕と一緒に来ませんか? 背中にのって、リボンであなたのからだを僕に結びつければ安全です。どうぞ一緒に来てください。あなたは私の命の恩人なのだから」。

親指姫は「もちろん、いっしょに行くわ」と言ってツバメの背中にのり、一緒に飛び立ちました。

花の国へ

ツバメはどんどん、飛んでいきます。行けば行くほど、景色がきれいになっていきます。緑がきれいな木々、青い湖。白い大理石の古い宮殿の塔のてっぺんにたくさんツバメの巣があります。

「ここが僕の家です。下で咲いている花から一つ選んでくれれば、そこにあなたをおろしますよ」。

大理石の塔が3つに割れて落ちているところがあり、その間に美しい大きな白い花が咲いていました。ツバメはその花の一つに親指姫をおろしました。

するとびっくりしたことに、その花の真ん中に、小さな男の人がいたのです。頭には黄金の王冠をかぶっていて、肩にはきらきらした翼がついています。

この人は、親指姫よりほんの少し大きいだけでした。実は彼は花の精です。ここにあるどんな花にも、小さな男の人や、女の人が住んでいるのです。

彼はこうした人々からなる国の王さまでした。

花の国の王さまと結婚

「まあ、なんて素敵な人」。親指姫はツバメにささやきました。親指姫を見た王さまは、これまでこんなに美しい人を見たことがないと思い、王冠を取って、親指姫にかぶせました。

王さまは親指姫の名前を聞くと、自分の妻になってくれないか頼みました。つまりそれは、花の女王になるということです。

親指姫がイエスと答えると、花々が咲いて、小さな人々が贈り物をもってきました。いちばん親指姫が気に入ったのは、銀色のハエがくれた翼です。翼をつけると、親指姫もほかの人みたいに花から花へ飛べるようになりました。

皆、大喜びでしたが、ひそかに親指姫を好きだったツバメは、彼女と別れるのがつらく、悲しみました。

「あなたは、もう親指姫(サンベリーナ)じゃないわ。あなたのようにきれいな人には、ふさわしくない汚い名前よ。これからは、あなたはマイアよ」。花の精が言いました。

ツバメは親指姫に別れを告げると、あたたかい国からデンマークに戻りました。童話を語る男の人の窓辺に巣があるのです。そこでツバメは、歌を歌ってこの物語を伝えたのです。

原文はこちら⇒ Hans Christian Andersen : Thumbelina

女の一生

今回原文を読んで感じたのは、この小さな女の子の波乱万丈な冒険物語は、昔の女性の一生だ、ということです。

庶民じゃなくて、ちょっと高貴な生まれの女性の一生。

美しく生まれついたばかりに、変な男に言い寄られたり、好きでもない男と結婚するように、親類縁者にプレッシャーをかけられたりします。

逃げ出して、一度は自由を感じても、すぐに家族に連れ戻されます。

しかも、この人は、一番好きだった男(童話ではツバメ)とは結婚しません。たまたま出会った、自分と身分が釣り合う金持ちで権力のある男にプロポーズされて、よく考えもせず、結婚を承諾します。

原文には、花の王さまは、カエルの息子や、黒いコートを着たもぐらとは違っていたので、プロポーズにイエスと言ったと書いてあります。

これまでろくでもない男に付きまとわれてほとほと疲れた彼女は、もうこのへんで手を打つかと、妥協して「はい」と答えたのです。

しかも、その後、「サンベリーナなんて名前はふさわしくない。あんたはマイアよ」と名前まで変えられてしまいます。

花の国の人々は、楽しそうにしていますが、親指姫が本当に幸せになるかは疑問です。

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