1980年代に、キャノン・フィルムズという会社が作っていた、童話の実写版映画シリーズ、キャノン・ムービー・テールズから、『美女と野獣』を見てみました。
美女と野獣、予告編(1分46秒)
作品情報
- 監督:ユージン・マーナー
- 原作:ヴィルヌーブ夫人の『美女と野獣』
- 主演:レベッカ・デモーネイ(ビューティ)、ジョン・サベージ(ビースト、王子)
- このシリーズは、時々、歌って踊るミュージカル映画で、この映画には4曲、歌が出てきます。忘れた頃に歌が出てくるぐらいの頻度です。
- たぶん、子供を対象とした、低~中予算映画で、撮影はイスラエルで行われています。
- 言語:映画、長さは94分。
- 公開:1987年4月。
あらすじ
大筋は、過去記事に書いた『美女と野獣』と一緒です。すなわち、豪商だった父の船が港に入らず、一家は貧乏になり、いったん田舎で暮らしますが、ある日、船が入ったという知らせがあり、父が港に行くと、船は人手に渡っています。
家に帰る途中に、父親は道に迷って大きな城に入り込み、用意されていたごちそうを食べます。朝になり、三女におみやげとして頼まれていたバラの花を庭から詰んだら、ビーストが出てきて、バラの代わりにおまえに死んでもらう、と言います。
三女は、父の代わりに城にとどまることにします。
クレジットでは、ヴィルヌーブ夫人の『美女と野獣』が原作だと出ますが、ボーモン夫人は、ヴィルヌーブ夫人の長い話の細部を削ぎ落としたので、両者は同じようなものだと思います。
原作では商人には6人子供がいますが、この映画では、娘3人に息子が2人になっていました。息子を3人にすると、俳優をもう一人雇う必要があるので、そうしたのかもしれません。
ディズニーのアニメや実写版に比べると、ずっと原作に忠実です(ディズニーが、原作から離れすぎているとも言えます)。
三女の名前はベルではなく、英語で『ビューティ』となっています。
砂漠のようなところで道に迷う父
正直、ものすごくおもしろいというわけではないのですが、ほかの『美女と野獣』とは、雰囲気がちょっと違うので、童話好きな人は見てみるといいかもしれません。といっても、日本では公開されていないし、DVDも販売されていないようです。
このシリーズは、イスラエルで撮影しているため、ヨーロッパの暗い森も、雪も出てきません。父親も、昼間、砂漠のようなところで迷い、砂ぼこりに巻かれます。
そういうところが、私はおもしろいと感じます。
予算の関係か、ビーストの家のテーブルもものすごく小さくて、アットホームな雰囲気です。
個性的なキャスティング
レベッカ・デモーネイは、セクシーな悪女、というイメージが強いと思います。
そのレベッカ・デモーネイが、自分のことはいつも後回しで、家族の世話をする、人のいいビューティを演じていて、最初は、違和感がありました。それに、演出のせいか、皆、セリフが棒読みっぽいです。
しかし、こじんまりとしたテーブルで、ビューティが、ジョン・サベージの野獣(人のいい雰囲気)とお話しているところを見たら、これはこれでありかもしれないと思いました。ビューティとビーストが2人で話すシーンは、多少、芝居に熱が入っています。
衣装もなかなか素敵です。予告編は画質がよくありませんが、本編はきれいでした。
個性的な余興
特撮みたいなものは使っておらず(せいぜい、父親の乗った馬がさっと消えるぐらい)、舞台劇のような雰囲気があります。
絵の中にいた大道芸人(?)が出てきて踊ったり、庭の白い彫像が、実は人間で、ビューティが、「踊って」というと、パントマイム風の動きから、踊り始め、ほかの彫像を誘って群舞となります。
こういう演出は好き嫌いがあると思いますが、私はわりに楽しいと思いました。いかにも、ファンタジーという感じです。
レベッカ・デモーネイもジョン・サベージも、歌が売りの役者ではないのに、意外とちゃんと歌っています。芸能人って何でもできる人が多いですね。
やや盛り上がりにかけるストーリー
全体的にペースが遅いので(じっくり撮っているともいえます)、最近の展開の早い映画になじんでいる人は、退屈に感じるかもしれません。
ビューティとビーストがたくさん話をするわりには、サスペンスがなく、ロマンスの盛り上がりも、たいして感じられません。
父親は、ずいぶんあっさり、娘を城に置いて家に帰っていくし、ビューティが、ビーストとの約束を忘れたときも、苦悩の色が見られません。この映画のビューティはおっとりしたちょっと天然なお嬢さんです。
ビューティが、ビーストの屋敷で王子さま(ビーストの元の姿)の出てくる夢を見ます。王子は、白いタイツ姿で「私を見つけておくれ。目で見えるものを信用しちゃいけない」などと言います。
前回見た、レア・セドゥーの『美女と野獣』でも、ベルが、何度も夢を見るので、もしかしたら、ヴィルヌーブ夫人の原作ではそうなっているのかもしれません。
あまりドラマチックな映画ではありませんが、ほんわかしているので、家族で見るのに向いている作品です。
こちらもキャノン・ムービー・テールズの作品です。
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