ペローの『ロバの皮』をジャック・ドゥミ監督が映画化した、『ロバと王女(Peau d’Âne)』の感想です。本気で絵本をそのまま実写にした、と感じられる作品で、一言でいうと、とてもかわいい映画です。
予告編
たぶん、こどもが見ることを想定しており、難しいところは何もないです(フランス語がそれなりにわかれば、の話)。おとぎ話の世界をストレートに再現しつつも、色使いや演出に、ドゥミ監督のこだわりが表れています。
ロバと王女、基本情報
- 監督、脚本:ジャック・ドゥミ
- 原作:シャルル・ペロー、ロバの皮
- 音楽:ミシェル・ルグラン
- 主演:カトリーヌ・ドヌーブ(お姫さま/ロバの皮)、ジャン・マレー(王さま)、ジャック・ペラン(王子さま)、デルフィーヌ・セイリグ(妖精)
- ところどころ歌が入るミュージカルですが、ガチに踊ったりはしません。
- 舞台は15~16世紀あたりでしょうか。衣装はルネサンス風かと思います。ただし、妖精だけは、現代風の寝間着みたいな衣装で、足が見えるセクシーなうすもののドレスです。
- 王女/ロバの皮の城は、 プレシブレ城 ( Château du Plessis-Bourré )王子の城はシャンボール城(Château de Chambord)で撮影されています。
あらすじ
妻に先立たれた王さまが、自分の娘と結婚しようとします(妻に、自分よりきれいな人と再婚して、と言われたため)。そんなことはしたくない娘は、妖精に助けを求めます。
妖精は、結婚する交換条件として、あつらえるのが難しい服を王さまにねだれ、とアドバイス。その結果、天候の色の服、月の色の服、太陽の色の服をねだりますが、すべてあっさり用意され、最後にお姫さまは、王さまが大事にしているロバの皮をねだります。
王さまはロバの皮も持ってきたので、妖精に「もう逃げなさい」と言われ、娘はそれをかぶって、ある村に到達。ここで、ロバの皮をかぶったまま、薄汚れた姿で豚の世話などをします。そのため、皆に『ロバの皮』と呼ばれます。
ある日、自分の小屋で、本来のお姫さまの姿で、髪をといていたら、窓からのぞいていた王子さまが一目惚れします。王子さまは、愛を求めて森の中をふらふらしていたのです。
ほぼ原作と一緒で、この先もだいたい原作どおりです。
おとぎ話の世界をカラフルに再現
この物語には、ロバの皮の父の王国と、王子さまの王国が出てきますが、ロバの皮の国のほうは、青い国で、家来はみんな青い服を着ているし、したっぱの家来はみな顔が青いし、彫像(人間が演じている)も青いです。
よく見ていると、ほかにも青いものがいろいろあり、ロバの小屋のアクセントカラーも青です。
王子さまの国は赤い国で、服も馬もまっかです。家来は赤い顔をしています。
途中、王子さまが熱で浮かされて(とpenは解釈)、ロバの皮と王子さまがデートするシーン(予告編にもあります)は、白い衣装で、最後の結婚式もまっしろです。
農場で働く村人は、茶色に白というふつうの服装ですが、ここもきっちりこの色でカラーコーディネートされています。
ロバはぬいぐるみみたいに可愛い
本物のロバを殺して、皮を用意すると、血みどろだろうし、ロバの顔も死後硬直が起きて、変質すると思いますが、この映画ではぬいぐるみふうのものを使っており、かわいいです。
このロバの皮をかぶって、カトリーヌ・ドヌーブが、水くみしたり、豚の世話をしているシーンはなんだか笑えてきます。
なお、ロバが金貨や宝石みたいなものをジャラジャラと排出するシーンもちゃんとあり、ロバの後ろ足と、地面に置いたお皿(ここに金貨が落ちてくる)が写ります。金貨を出すとき、ロバは奇声をあげますが、きっと痛いのでしょう。
このロバ、あっさり殺されてかわいそうですね。
コクトーの映画へのオマージュあり
ジャン・マレーが王さまを演じているせいか、コクトーの『美女と野獣』と雰囲気が似ているシーンがあります。
たとえば、夜、ドヌーブが、ロバの皮を着て、お城の鉄格子の扉(?)を開けて逃げるところをスローモーションで撮ったところなど。とても幻想的なシーンです。
王子さまが、ロバの皮の小屋に近づこうとするとき、目に見えない壁にぶつかるのは、『オルフェ』のシーンに似ています。
おとぎ話そのものの衣装とセット
衣装はどれも豪華です。天候のドレスと、月のドレスは、ワンシーンぐらいしか使われないのに、手抜きなし。
青い国の王さまがすわっている巨大な猫の椅子は、見るたびに笑えます。ドヌーブは野原のベッドに寝ていますし、王子さまのベッドもなんだかよくわからない置物にかこまれていて、こんなところでは安眠できないだろうと思われる代物です。
お城、森、お姫さまのきらびやかなドレスにディアラ、馬に乗る王子さま、口からカエルを吐き出す年よりふうの女性、魔法の杖(これは原作にはありません)など、おとぎ話のアイテムがたくさん出てきます。
そんな中、妖精の家(じゃないけど)には、電話があったり、王子と川遊びをしているお姫さまが(これは前述の王子の夢のシーン)、マリファナらしきものを吸ってせきこんだり、最後に、ものすごく現代的な物が出てきたりと、キッチュなシーンもあります。
行動的なお姫さま
『ロバの皮』のお姫さまは、父親と結婚するのがいやで、お城を逃げ出す、わりと行動的なタイプです。しかも、この映画では、わざとお菓子の生地に指輪を混ぜています。
見た目はそそとしたお姫さまですが(映画の最初のほうでは父親に忠実です)、ロバの皮をかぶってから、自主性が芽生えたのかもしれません。
この話、おもしろいですし、おとぎ話が好きな人なら楽しめる映画でしょう。ミシェル・ルグランの音楽も私は好きです。
ただ、指輪の持ち主探しのシーンはあそこまで長くする必要はなかったと思います。確かに原作でも、身分の高い人から順番に、召使いや料理番、羊飼いまで、指輪をはめさせたとありますが、ケーキに入っていたんだから、ロバの皮の指輪に決まってますよね?
★王女がケーキを焼くシーンで歌っている、愛のケーキのレシピ( Recette pour un cake d’amour )の訳詞を別ブログに書きました⇒ 愛のケーキのレシピ(映画:ロバと王女より)の訳詞。
コメント
この映画見たいと思っていたのですよ!確かもう4〜5年くらい前になると思うけどある宝石メーカー(名前忘れた)がこの映画を元に作品を制作して、しかも発表展示祭みたいなモンをシャンボール城でやったという記事をどこだったか時間まちの時に雑誌で読んだことがある。お姫さまか王子さま、シャンボール城に住んでいる設定でしょ、たぶん。すごく素敵でこのページだけ欲しいと思ったけど、そうもいかず。宝石デザインも素敵だったけど、それを身につけたファッションショーがさらに素敵で、それよりも元の映画がとても見たいと思ったのを思い出しました。
お知らせありがとうございます!ちょっとじっくり鑑賞しようと思います。
いま、基本情報のところにお城の情報を付け加えました。王子が住んでいるのが、シャンボール城です。この記事の画像に使っているのが、王女の城のプレシブレ城。
なんか今いちの画像だから、別の画像に変えたほうがいいかなあ、と考え中。でも、いまほとんどの人がスマホでアクセスするから、きれいな写真使ってもあまり意味ないかと思ったり。
宝石メーカーと映画のタイアップ? まあ、そういうこともあるかもね。やたらと衣装はきらびやかですよ。1回使っただけで終わらせるのもったいないなあと思うぐらい。
関係ないけど、いま、メインブログのほうに、ケーキを焼くシーンで歌っている歌の訳詞をのせました⇒https://furansu-go.com/recette-pour-un-cake-d-amour/
歌詞の紹介ありがとうございます。ちょうど知りたいと思っていたところです。とても可愛い歌ですね。ドレスの袖口が汚れるのが気になって仕方がないですが、なかなか面白い動画です。ロバの皮(ぬいぐるみの被り物)可愛い!
ペローの原作でも、ケーキを作る前に、太陽の色の服に着替えます。
指輪を落とす関係上、お姫さまの姿になる必要があったのかもしれません。
ろば、あれやっぱりぬいぐるみ風ですよね。もっとリアルにしてもらってもよかったかな、と思います。
子供のとき、『おはよう! こどもショー』で見たろばくんみたいで、かわいいな、と思ったのですが、あとで検索してろばくんの画像を見たら、あまりかわいくありませんでした。
当時はかわいいと思っていたんですけど。