英語圏でとてもよく知られている童話、Goldilocks and the Three Bears(ゴルディロックスと3匹のくま)、または The Three Bears (3匹のくま)のあらすじを紹介します。
ゴルディロックスは女の子の名前です。Goldi は、ゴールデン、lock は巻き毛なので、『金髪ちゃん』という感じです。
超簡単な要約
忙しい人用1行サマリー:くまの親子の留守中に、ゴルディロックスという女の子が、勝手に家に入り、ポーリッジ(おかゆ)を食べ、椅子をこわし、ベッドに寝ているところを、帰宅したくまたちに見つかったので、森に逃げる話。
ゴルディロックス、おかゆを食べる
昔むかし、ゴルディロックス(長いので以降、ゴルディとします)という名の女の子がいました。ゴルディは、森を歩いているとき、ある家にたどりつきます。
ノックをしても返事がないので、ゴルディは中に入りました。
キッチンのテーブルにはボールに入ったおかゆが3つ並んでいました。ゴルディは、はしから順番に味見しました。
「これは熱すぎる、こっちは冷たすぎる、これはちょうどいいわ!」。ゴルディは最後にチェックしたおかゆを全部食べました。
ゴルディロックス、椅子をこわす
おかゆを食べたら、ゴルディはなんだか疲れたので、居間に行って椅子の上に座ることにしました。椅子は3つあります。
ここでもゴルディは1つずつチェックしました。
「これは大きすぎるわ。こっちもまだ大きい。これはちょうどいいわね」。
ゴルディが、3つ目の一番小さい椅子に座ったら、その椅子はこわれてしまいます。
ゴルディロックス、ベッドに寝る
ゴルディは本当に疲れていたので、2階の寝室で寝ることにしました。ここにもベッドが3つ並んでいます。
ゴルディはひとつずつ寝てみました。
「これは硬すぎるわ。こっちは柔らかすぎる。うん、これはちょうどいいわね」
そういうと、ゴルディは3つ目のベッドに横になり眠りました。
くまの一家が帰ってくる
ゴルディが寝ている間に、家の持ち主のくまの一家(父、母、子供)が帰ってきました。
「誰かが僕のおかゆを食べたあとがある」、父さんぐまが言います。
「誰かが私のおかゆを食べたあとがある」、母さんぐまが言います。
「誰かが僕のおかゆをみんな食べちゃった!」子供のくまが泣きました。
椅子についても同様で、
「誰かが僕の椅子に座った」「誰かが私の椅子に座ったわ」「誰かが僕の椅子に座ってこわしちゃった!」と続きます。
ゴルディロックス、くまに見つかる
くまたちが2階に行くと、「誰かが僕のベッドに寝た」「誰かが私のベッドに寝た」という父さんぐまと母さんぐまの声が続き、最後に、「誰かが僕のベッドに寝て、まだ寝てるよ!」と子供のくまが叫びました。
その瞬間、ゴルディは目をさまし、3匹のくまを見て、叫びました。
「助けて~~~~!」
そう言うとゴルディは、ベッドから飛び降り、急いで部屋を出て、階段をかけおり、ドアを開けると、森に走っていきました。
ゴルディは、2度と3匹のくまのところには戻ってきませんでした。
参照した原文⇒ The Story of Goldilocks and the Three Bears
教訓があるような、ないような
この話、大人が読むと、「え、それで終わりなの」と思うかもしれませんが、子供たちにはとても人気があり、絵本もたくさん出ています。
「ゴルディロックスがくまに見つかっちゃった、ハラハラ、無事に逃げた、よかった」となるのかもしれません。
この話から、「人の家に勝手に入ってはいけません。人の食事を勝手に食べてはいけません。人の物を勝手に使ってはいけません」と不法侵入がいけないことや、プライバシーの尊重を教える人もいます。
しかし、ゴルディロックスは無事に逃げおおせているので、説得力に欠けます。
私が、受け取ったメッセージは、
「ポーリッジを作ったら、すぐに食べましょう」(そもそも、なぜ、3つのポーリッジの温度が違うのか? 器の大きさの違いでしょうか?)
「出かけるときは、ドアに鍵をかけましょう」
この2つです。
『イソップ物語』のような説話集は、子供にモラルを教えるために書かれたものですが、童話は、べつにモラルが入っていなくてもおもしろければいいので、『3匹のくま』は、なんだからわからないけど、おもしろい話として子供に受けているのでしょう。
読み手や語り手の話術(または芝居)の見せ所として、「誰かが~した」とくまたちが驚くシーンが、3パターン続いているのも、子供に受ける要因の一つです。
物語の背景
『3匹のくま』はもとになるもの(書かれたもの)が3つあると言われています。
1831年に、Eleanor Mureという水彩画の描き方を教えていた人(生涯独身だった)が、かわいがっていた甥の4歳の誕生日に、3匹のくまの詩を書き水彩画をそえて、手製の本にして贈りました。
この詩では、くまは家族ではなく、全員同じサイズで、くまの家(森にはない)にやってくるのは老婆です。勝手に家にやってきて、ミルクを飲み、椅子をこわし、ベッドに寝た老婆を、くまは火に投げ、その後、水中に投げます。
1837年にRobert Southey(ロバート・サウジー、1774-1843)というロマン派の詩人が、『3匹のくま』の詩を書いて、広く知られるようになりました。
サウジーの詩では、くまは森の家に住んでいて、その家にやってくるのは老婆です。彼の詩では、「誰かが~した」と繰り返す部分が登場します。
1849年に、Joseph Cundall(1818-1895)というヴィクトリア時代の作家が、サウジーの詩をもとに書いた童話を、Treasury of Pleasure Books for Young Childrenという本に入れました。
このとき、老婆が「シルバーヘアー」という名の女の子になります。
この後、いろいろな人が、書き換え、次第に3匹のくまは親子になり、女の子はゴルディロックス(金髪)になるのです。
先に書いた3人も、その後のバージョンも、伝承で伝わっていたものを盛り込んでいると思います。
ゴルディロックスの原理
童話の中でゴルディロックスが、ちょうどいい温度のおかゆや、ちょうどいいサイズの椅子、ちょうどいい硬さのベッドを選ぶことから、ちょうどいいものを選ぶことを、ゴルディロックスの原理と呼び、いろいろな学問で使われています。
たとえば、ゴルディロックス・ゾーンとは、宇宙における、生命の進化に適した領域のことですし、ゴルディロックス相場は、適度な相場(適温相場)で、過熱しすぎてもいないけど、閑散としているわけでもない相場です。
心理学でいうゴルディロックス効果は、まんなかのものを選ぶ心理です。高いものでもなく、安すぎるものでもなく、中間の値段のものを選ぶようなことです。
こうした言葉の由来になるほど、ゴルディロックスは、誰もが知っている童話であり、女の子なのです。
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