『シンデレラ物語』フランス語吹替版と日本語版の違い。

シロツメクサ 『シンデレラ物語』について

このアニメのオリジナルは日本語ですが、私が見ているのはフランス語吹替え版です。日本語版も、すべてセリフを確認しましたが、私はフランス語版のほうが好きです。今回は私が思う両者の違いを書きます。

フランス語の吹替えは、Made In Europe という名前の、ベルギーにあるプロダクションが行っています。

声の印象の違い

日本では、声優を専業としている人がたくさんいますが、海外では、俳優が、声優もやる形が多いです。よって日本の声優さんの技術水準は高いとは思います。

しかし、私が苦手なのは、アニメのヒロインの声がいつもやたらと高いことです。かわいい声の人が、ヒロインを演じることが多いですよね? 『シンデレラ物語』も同様で、シンデレラはとてもかわいい声をしています。

ずっとフランス語版を見ていた私は、この声に大きな違和感を感じました。私は、女性ならちょっと低めのアルトの声が好きで、Peppa Pig(オリジナルのイギリス版)のようなハスキーボイスも好きです。

日本語版のシンデレラは、声がかわいいため、より幼い女の子という印象を受けます。

しかし、このアニメのシンデレラは、活発で、男勝りな性格なので(特に、うそつきシャルルに対しては、いつも強気に出ています)、フランス語版のサンドリヨンの声のほうが合っています。

シャルルの声も、私はフランス語版のほうが好きですし、シャルルの声をあてている人は、とてもうまいと思います。継母もフランス語版のほうがいいです。

フランス語版のほうがセリフが多い

映像は全く同じなので、話がそんなに変わるわけはないのですが、日仏、セリフのニュアンスがちょっと違います。

もっとも違うのは、フランス語版のほうがセリフが多いということ。あるいは、日本語版はあまりしゃべっていない、ともいえます。

たとえば、第2話で2人が初めて会うシーン。シャルルが、拾った鍵をシンデレラに返す場面の最後、2人はしばらくじっと見つめ合っていますが、鳥が飛び立つ音で、我に返ったシンデレラは、日本語版では、「大変!」といって走り出し、シャルルのほうは、「あ、きみぃ!」と言います。

フランス語版では、

サンドリヨン:「あ、もう遅いわ。帰らなきゃ(Oh, il’est tard. Je dois partir !)」
シャルル:「また会える?(Vous reverrai un jour ?)」
サンドリヨン:「たぶんね。ひょっとしたらね (Peut-être. Qui sait ?)」(走りながら)

これだけしゃべっています。

ほかのシーンでもこういうことがよくあります。これは、日本が、ローコンテクスト文化であり、フランス語圏がハイコンテクスト文化だから生じる違いでしょう。

ローコンテクストとは、共通の文脈や暗黙の了解があることが多いため、言葉であまり説明しなくても、意思疎通ができる言語や文化のことです。ハイコンテクストはこの逆です。

日本語版のシンデレラのほうが幼い

先にも書いたように、日本語版のシンデレラは、フランス語版のサンドリヨンより、「女の子」という感じで、サンドリヨンより、かよわく、自立心が低い印象です。

第2話の鍵のやりとりをするシーンで、日本語版では、シンデレラは「あなたの顔がすごく怖かったわ」といいながら、顔に手をあて、泣き出しそうになります。

フランス語版のサンドリヨンも、もちろん同じことをしていますが、話していることは違います。

最初は、「あなたの顔が怖かった」と言います。しかし、シャルルが、「そんなに怖かった? そんなつもりはなかったんだけど、本当に申し訳ない」と言うと、「私はなんて恩知らずなのかしら。お礼もちゃんと言わないで。あやまるのはこっちのほうなのに。あなたは私の鍵を届けくれたのに、あなたが私にあやまるなんて」と言いながら、顔に手をあてます。

つまりサンドリヨンはシャルルの顔が怖かったことを思い出して泣いているのではなく、自分の行いを恥じて泣いているのです。

フランス語版のほうがロマンス度が高い

日本語版は、シンデレラもシャルルもあまり自分の気持ちをしっかり表明しないため、お互いがお互いのことをどう思っているのか、わかりにくい描き方です。

フランス語版でも、行動は同じですが、日本語版よりは、お互いに好意を持っていることが、わかります。

特に、シャルルは、先にも書いたように、初対面のシーンで、「また会える?」と聞いていますし、他のシーンでサンドリヨンが怒って立ち去ると、「あ、ちょっと待っって、戻ってきて」と懇願しています。

第23話の最後、サンドリヨンがシャルルの正体を知ったあと、帰りの馬車の中で、自分の気持ちを語るシーンがあります。日本語版では、「あいつのこと好きだったのかな?」と言ったあと、回想シーンに入り、ここでは、それぞれのシーンのセリフが聞こえます。

しかし、フランス語版では、回想シーンでも、そのまま現在のサンドリヨンが考えていることを、続けて話しており、その気持ちにぐっとくるシーンとなっています。

フランス語吹替え版・基本情報

こちらのページの情報によると⇒ Planète Jeunesse – Cendrillon (Série)  フランスではこれまで最低4回は放映されています。

  1. 1996年、9月2日~ France 3 にて。
  2. 1990年代の終わりに、ケーブルやサテライトテレビなどで。
  3. 1997年、11月6日~ 地上波で再放送、France 3にて。
  4. 1999年、6月28日~ 地上波でまた再放送、France 3 にて。

YouTubeでのコメントを見ていると、2000年代のはじめにも、どこかで放映があったようです。

France 3は国営テレビで、そこで、3回も再放送があったのですから、そこそこ評判がよかったのでしょう。

なお、最近、イギリスのアマゾンのプライムビデオとして、このアニメ全26話が配信されていることを発見しました。日本でも配信されるといいのですが(まず、ないでしょうけどね)。

コメント

  1. アンズ より:

    初めまして
    Primevideoで配信されていて興味を持ったので、検索してたどり着きました。
    声優の川村万梨阿さんは色っぽくて気の強いキャラが多いため、この作品では監督の指示で高めに演じられていると思われます。
    シンデレラの顔は他のアニメよりも大人っぽいのでもっと低めの声のほうが好みですが、高めの声のヒロインのほうが日本人に好まれるので仕方ないですね。

    • pen より:

      アンズさん

      はじめまして。コメントありがとうございます。
      そうですね。日本語の吹き替えだと、ヒロインは一般に高い声が多いですね。
      わたしももう少し、低い声のほうが好きです。

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