作品に対する3つの大きな不満。

白と青のお城 『シンデレラ物語』について

私は、おおむねこのアニメを好きですが(でなければこんなブログは作りません)、それでも不満なところが、いくつかあります。今回は、特に残念に思うポイントを3つ紹介します。

シャルルの突然の心変わり?

もっとも大きな不満は、第24話のお城の舞踏会で、シャルルが初めてあったきれいな女性に夢中になることです。この女性は、美しいドレスやジュエリーで着飾った(魔法のおかげ)、ふだんとは様子がずいぶん違うサンドリヨン(シンデレラ)です。

シャルルはもともとサンドリヨンが好きだから、彼がこの女性に夢中になっても、結婚という結論は同じですし、実際そういうエンディングです。

しかし、踊っているとき、シャルルはこの女性がサンドリヨンだとは全く気づいていません。実際、見知らぬ女性に、「あなたは僕の知っている人にちょっと似ています」と、サンドリヨンの話をします。

つまり、シャルルにとっては、この女性は初めてあった赤の他人なのです。

シャルルの脳内では、これまで第2話から第23話までかけて、ゆっくり、しかし確実に関係を深めてきたサンドリヨンのことは、どこかにいってしまい、突然、見知らぬ美女を大好きになってしまったのです。

こうしないと、シンデレラのお城とガラスの靴のシーンを再現できない、という事情はわかりますが、ここはもう少しシャルルの心理描写を増やすか、展開を変えてほしかったところです。

この突然のシャルルの心変わりについては、YouTubeのコメントらんには、いろいろな意見があり、彼を弁護する声もあります。ここをどう解釈するかについては、また別の記事で考察します。

サンドリヨンの価値観が変わってしまった

24話で変わったのはシャルルだけではありません。サンドリヨンの価値観も変わってしまいました。

第23話のおしまいのほうで、うそつきシャルルが王子様だと知ったサンドリヨンは、「私はシャルルが好きだったんだわ」と自分の気持ちに気づく一方、「もうシャルルには会えない。なぜなら私とは世界が違う人なのだもの」とも思います。

ですが、これはそれまでのサンドリヨンの考え方とは180度違います。

サンドリヨンもシャルルも、第10話で、「結婚に身分や見かけなんて関係ない。愛があれば、どんな障害だって乗り越えられる」と語っています。ふたりとも、「ステータスなんて意味がない。大事なのは愛だ」ということで意見が一致しているのです。

実際、2人は、第11話で、貴族の娘と、ただのバイオリニスト(昔は音楽家の地位は低かったようです)のかけおちの手伝いをしています。

それなのに、23話の終わりから、25話にかけて、サンドリヨンは、自分と王子様は身分が違うと何度も言うのです。しかも、よくよく考えると、サンドリヨンは公爵の娘なので、王子様のお妃候補としては、身分違いどころか、ちゃんと適しています。

なぜ、サンドリヨンは、愛を信じる心や、自尊心を失ってしまったのでしょうか?

魔法のちからでガラスの靴をはく

3つ目の不満は、サンドリヨンにガラスの靴をはかせたのが、魔法使いのポーレット(日本語版ではパレット)さんだということです。

第25話では、王子様が恋焦がれている女性を探すために、お城のお使いの人(アンスとアレックス)が、ガラスの靴をもって、国中の良家の女性のところを回ります。この靴が合えば、その人は、王子様が舞踏会であった女性であり、お妃になる人なのです。

お使いの人が最後にやってきたのは、サンドリヨンの家。まま姉のカトリーヌとジャンヌは必死に靴をはこうとしましたが、大足すぎて、入りませんでした。

最後にサンドリヨンが呼ばれ、「靴をはいてみてください」と言われますが、サンドリヨンは、「私は舞踏会には参りませんでしたので…」とうそをつき、靴をはこうとしません。

サンドリヨンは、うそつきシャルルに、「私、うそつく人嫌い!」と言い放っていたのに、「ここで、うそを言うってどうよ」、と思います。サンドリヨンは、「あの夜の私は、本当の自分じゃない、一夜の幻なのよ」と思っているのです。

魔法をつかって、美しく着飾ったのは、ズルだ、考えているようです。ここでも、「でも、外見はどうでもいいってことだったよね? シャルルだって舞踏会のときにそういう話をしていたし」と私、penは、けげんに思ってしまいます。

お城の人は、「無理強いはできませんね」と帰っていきます。この展開を見ていた、サンドリヨンの飼い犬にして、仲のよい友だちのベルース(日本語版ではワンダ)は、サンドリヨンから、もう片方の靴が入った箱を奪い、お城の馬車を追いかけます。

箱を口にくわえて追いかけている犬に気づいたアレックスが、馬車を止めて、箱の中身を見てみると、なんともう片方のガラスの靴が入っているではありませんか。「え、これってペアだよね?!」

アンスとアレックスは再び、サンドリヨンの家に行き、彼女の前に、両方そろったガラスの靴を置きます。「お願いです。はいてください」。それでもまだ、サンドリヨンは、はこうとしません。下をむいて、じーっとしています。

このとき、ポーレットがやってきて、窓の外から、サンドリヨンに魔法をかけて、靴をはかせるのです。ポーレットが魔法の杖をひとふりしたら、サンドリヨンがいつも履いている茶色いサボが消えて、勝手に足が、靴の中にすっぽり入ります。

は?

魔法ではかせるの?

ポーレットはサンドリヨンの願いをよく知っていて、叶えてあげたともいえますが、 この魔法がなかったら、サンドリヨンは、王子様とは結ばれなかったのです。

物語の最後に、「私もサンドリヨンみたいなプリンセスになれるかな」という小さな女の子に、ポーレットは、「なんだってできるわよ。夢を実現したのはサンドリヨン自身よ」といいます。

けれども、サンドリヨンは、靴をはこうとしなかったのです。

「自分で幸せ、つかんでないじゃん?」 そう思ったのですが、この記事を書いているうちに、べつの可能性も思いつきました。

そもそも彼女を舞踏会に送り込んだのは、ポーレットなので、彼女の後押しがなかったら、サンドリヨンはお妃にはなれませんでした。ポーレットはもう一押ししただけなのかもしれません。

原作のシャルル・ペローの「サンドリヨン」の教訓には、才能があっても、それを生かしてくれる親やその変わりとなる人間がいなければ全く役立たない、と書かれています。

つまり後見人が必要なのです。

物語本文の終わりには、美しさより善意のほうがずっと尊い、ともあります。

善意があるからこそ後見人が得られた、と考えれば、ポーレットが、気持ちのやさしいサンドリヨンの幸せのために、靴をはかせる魔法をかけたのは、原作の意図をくんだシナリオだったともいえそうです。

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