猫とねずみの共同生活(グリム兄弟 1812)のあらすじ

猫とねずみ グリム童話

グリム童話から、Cat and Mouse in Partnership(原題 Katze und Maus in Gesellschaft)という童話を紹介します。Wikipediaで調べたら、邦題は「猫とねずみとお友だち」とか、「猫とねずみのいっしょのくらし」となっていました。

「猫とねずみとお友達」だと、猫とねずみのほかにもう1種類、何か動物が出てきそうですが、実際は猫とねずみしか出てこないし、英語のタイトルを訳すと「パートナーシップを結んだ猫とねずみ」なので、この記事では、猫とねずみの共同生活、と独自にタイトルをつけました。

猫とねずみの共同生活:1行のあらすじ

猫と一緒に生活をしたばっかりに、殺されてしまうねずみの話。

猫とねずみが暮らし始める

猫は、あるねずみと知り合い、すごく気に入って、一緒に暮らそうともちかけました。ねずみも承諾し、両者は同棲を始めます。

猫は、「冬に備えて準備しないとね。そうしないと飢えてしまう。きみは、あちこち出歩けないし。だって、ネズミ取りに捉えられちゃうものね」と言い、結局彼らはあぶらの入ったツボを買い、これも、猫の提案で、教会に置くことにしました。「教会からものを盗む人はいない」、というのが猫の言い分です。

あぶらをなめたくなる猫

油のつぼを教会に置いて、まだそんなにたっていないのに、猫はあぶらを食べたくなりました。

猫「いとこが小猫を生んでさ。名付け親になってほしいと頼まれたんだ。生まれたのは、白に茶色の斑点がある猫でね。洗礼に付き合わないといけないから、今日は出かけるよ。留守番を頼む」

ねずみ「ええ、もちろんいいわよ。でも、何か食べものを見つけたら、私の分も持ってきてほしいわ。私も、教会の甘いワインが飲みたいな」

ところが猫の言ったことは全部嘘。猫にいとこなんていませんし、名付け親の件もでたらめ。猫はまっすぐ教会に生き、壺の中の油の上のほうをなめました。

その後、猫はそこらをぶらぶらしたり、ひなたぼっこしたり、壺の中のあぶらを思い出してうっとりしたりと気ままに過ごして、家に帰りました。

子猫の名前は?

猫「ただいま~。すべてうまく行ったよ」

ねずみ「どんな名前をつけたの?」

猫「上無しさ」

ねずみ「上無し? 変な名前ねえ。そういう名前、あなたの一族ではふつうなの?」

猫「何が問題なんだよ? 『パンくず盗人』という名前よりましだろうが」

またあぶらをなめに行く猫

しばらくして、また猫はあぶらが欲しくなり、また名付け親を頼まれたと嘘をついて出かけました。今回生まれたのは、首に白いわっかがついた色合いの子猫だと言って。

猫がいないあいだ、ねずみは家事にいそしんでいました。

あぶらを半分あたりまでなめて猫が帰宅すると、ねずみがまた名前を聞いたので、猫は、「半分無し」と答えました。

ねずみ「上無しに、半分無しって、ほんと、変な名前ね。考えちゃうわ」。

猫「きみは、いつも家にいるでしょう。灰色の毛皮のコートを着て、長いお下げ髪でさ。昼間出かけないから、きみは妄想しちゃうんだよ」。

またもあぶらをなめに行く猫

しばらくすると、猫はまたあぶらが欲しくなり、また名付け親の嘘をついて出かけ、すっかりあぶらをなめきり、満足して帰宅しました。

ねずみ「どんな名前にしたの?」

猫「全部無し、さ」

ねずみ「全部無し? それってどういう意味よ、ますますわかんないわ」

そういうと猫は首を振ってから、ベッドに入りました。

冬が来た

これ以降、誰も猫に名付け親を頼みませんでした。冬が来て食べ物がなくなったので、ねずみは猫に、教会においたあぶらの壺を取りに行こうと誘いました。

ねずみ「ちょうどいいあんばいで、おいしいはずよ」

猫「そうだね。きみは堪能すると思うよ。きみが小さな舌を窓から突き出すのと同じくらい」

猫とねずみは教会に出かけます。壺はありましたが、中身は空です。

ねずみ「まあ! 私、ようやくわかったわ。あなたってたいした友達ね。名付け親をしてたとき、全部食べたのね。最初は上のほう、それから半分まで、そして…」。

猫「静かにしろよ。それ以上言うと、お前も食べるぞ」。

「全部無し」という言葉は、すでにねずみの口から出かかっていましたが、言い切る前に、猫がねずみに飛びかかり飲みこんでしまいました。まあ、世の中ってこういうもんなんです。

☆原文(英語)はこちら⇒Grimm 002: Cat and Mouse in Partnership

教訓:同棲相手は選ばなければならない

あらすじでは、ねずみを女性として書きましたが、英語では、ねずみのことを her と呼んでいるので、猫は男性、ねずみは女性というカップルの話だと思います。

2人でお金を出し合って(?)買った、共同財産であるあぶらを猫は一人で全部なめてしまい、しかも、最後には、ねずみまで食べるという残酷なお話です。

実際、物語の最後に、「世の中はこういうものだ」と書いてあるので、よくあることなんでしょう。

さすがに、人間は、相手の人間を食べたりはしませんが、精神的、経済的。肉体的に食い物にすることはよくあります。

この場合、ねずみはどうするべきだったのでしょうか?

猫の申し出をきっぱり断るべきだったのです。また、猫が巧妙に嘘をつき、人を食った名前を口にしていたとき、気づくべきでしたね。結婚する前に同棲をするカップルはたくさんいますが、同棲をする前に、一緒に旅行するなど、ストレスのかかるシチュエーションを共に体験して、相手の本当の姿を見極めることが望まれます。

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