オオカミと7匹の子ヤギ(グリム兄弟、1812)のあらすじ。

子ヤギ グリム童話

グリム童話から、The Wolf and the Seven Young Goats(直訳:オオカミと7人の子ヤギ)を紹介します。原題は、Der Wolf und die sieben jungen Geißlein)。

オオカミの危険にさらされる7匹の子ヤギの話です。

1行のあらすじ

オオカミにだまされ、食べられてしまった子ヤギ7匹が無事に生還する話。

母親ヤギ、出かける

あるところに、7匹の子どもがいる母ヤギがいました。母ヤギは、子どもたちをとても愛していました。

ある日、母ヤギは森に食べ物を探しにいくことになり、子供たちに留守中の注意をします。

「森に行くけど、オオカミに気をつけて。家に入れたら食べられてしまうよ。オオカミは、他のものに化けているかもしれないけど、しわがれ声と、黒い足が特徴だからね」。

子どもたちが、「大丈夫だよ、僕たち注意する。声と足、ちゃんとチェックする」と答えたので、母は出かけました。

オオカミがやってくる

母が出かけると、ほどなくしてオオカミがやってきました。

オオカミ:「私よ、母よ、入れてちょうだい」。

子ヤギたち:「おまえは母さんじゃない、母さんはそんなしわがれ声じゃないもの」。

オオカミは、声をソフトにするために、店に行き、大きなチョークを買って食べました。

オオカミ:「私よ、母よ、入れてちょうだい」。

子ヤギたち:「おまえは母さんじゃない、母さんの足は黒くないもの」。

オオカミは今度はパン屋に行き、「足を怪我したから、パン生地をこすりつけてくれ」と頼みました。パン屋は言われたとおりにします。

それからオオカミは、粉屋に行き、「足に粉をふりかけてくれ」と頼みます。

粉屋は、オオカミが誰かをだまそうとしていると気づき、断りますが、オオカミが「言うことをきかないとお前を食い殺す」と言ったので、結局、オオカミの足に白い粉をふりかけました。

だまされる子ヤギ

オオカミが3度目に出直したとき、声はソフトだし、足も白かったから、子ヤギたちはオオカミを見破ることができず、母だと思い、うっかり家に入れてしまいました。

「オオカミだ!」

子ヤギたちはびっくりし、家のあちこちに逃げ隠れました。ある者は、テーブル、ある者は椅子の下、ベッドの下、かまどの中、台所などなど。末っ子は、時計の箱に隠れました。

しかし、オオカミは、すぐに子ヤギを見つけ、末っ子以外は、全員食べてしまいました。おなかがいっぱいになったオオカミは、ヤギの家を出て、牧場の木のところまで行き、昼寝をし始めました。

子ヤギ、救出作戦

母ヤギが戻ってきたら、まあ、びっくり。ドアはばーんと開き、家の中は、大きな地震があったかのように、荒れています。そして、子どもたちはどこにもいません。母ヤギが、順番に子供の名を呼ぶと、末っ子だけが、出てきました。

事情をきいた母ヤギは、末っ子を連れて、牧場まで来たら、オオカミが高いびきで寝ています。よく見てみると、オオカミのおなかのあちこちがピクピクしています。

「まあ、もしかしたら、子どもたちはオオカミの腹の中でまだ生きているのかもしれないわ」

母ヤギは末っ子に、はさみ、針、糸を取ってくるように言いました。そして、はさみでオオカミの腹のあたりを切ると、やはり子どもたちが入っていたので、順番に取り出しました。

オオカミはあまりに欲張りで、できるだけ早くたくさん食べたいと思ったのでしょう。全員、丸呑みしていたので、子ヤギたちは、傷ひとつ負っていませんでした。

母と子ヤギは再会を喜び、抱き合い、それはさながら結婚式のようでした。

子ヤギの代わりに

落ち着くと、母親は、子どもたちにできるだけ大きな石を持ってくるよう言いました。子ヤギの代わりに、オオカミの腹に入れておくためです。

子ヤギはすぐに石を持ってきて、できるだけたくさんオオカミの腹に入れ、最後に母ヤギが腹の切れ目をきれいに縫い上げました。

この間、オオカミはまったく気づきません。

オオカミの運命

しばらくして、オオカミが目をさまし、立ち上がりました。おなかの石のせいで、すごくのどが乾いていたので、オオカミは井戸のところへ行き、水を飲みました。

歩くたびに、お腹の中で石がぶつかりあってゴロゴロします。

「なんだ、これ? 子ヤギだと思ったけど、石だったわけ?」

また水を飲もうと、オオカミが井戸にかがみ込んだら、石が重すぎて、井戸に落ちてしまい、そのまま溺れ死にました。

様子を見ていたヤギたちは、「オオカミが死んだ、オオカミが死んだ」と大喜び。母親と一緒に、井戸の周りで喜びの踊りをしました。

☆原文(英語)はこちら⇒Grimm 005: The Wolf and the Seven Young Kids

警戒を怠ってはいけない

この話からは、いくつかの教訓を得られますが、3つだけ取り上げましょう。

まず、「用心を怠ってはならない」というのがありますね。

声がソフトで、足が黒くても、それだけで、母親だと思ってはいけません。だって、母親なら、家の鍵を持ってますよね?

それとも、この家は、中からしか鍵がかからない家なのでしょうか? 昔の鍵はそうだったのかもしれません。

次に、「欲張ってはいけない」というのもあります。

オオカミは、子ヤギを丸呑みせず、1匹ずつ、確実に咀しゃくするべきだったのです。

「食べてすぐに寝てはいけない」というのもあります。

食後、横になって食休みするのはよいことですが、ぐっすり眠り込むと、消化不良を起こすそうです。

参考にしたページ⇒「食後すぐにゴロ寝するのは良くない?」 | 【 みのりクリニック&プラムケアー ホームページ 】

ほかにも、隠れ場所に関する教訓もあります。あまりにあからさまな場所に隠れても意味がありません。地震が来たとき、どこにどんなふうに隠れるか、はたまたどこへ逃げるかは、あらかじめ考えておいたほうがいいです。

全体として、「警戒心を怠ってはいけない」というのが、この話のメインの教訓でしょう。

それにしても、オオカミは、胴体を切られても痛くなかったんでしょうか? 血が出たという描写もいっさいありません。ふつう体を切られたら、血が吹き出るので、ヤギは血まみれだろうし、その後の、縫合もそんなにさくさくできませんよね。

この母ヤギは、とても冷静で、仕事が早いタイプです。

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