有名な児童文学、The Secret Garden (秘密の花園)のあらすじを紹介します。
作者は、Frances Hodgson Burnettという、女流作家です。
バーネットは、イギリス生まれのイギリス人ですが、後に、アメリカに移住し、この小説も、まず、アメリカの雑誌に連載されました。
だから、アメリカの小説と言えるでしょうが、舞台はイギリスのヨークシャーです。
そのせいかどうか、『ジェーン・エア』と雰囲気が似ている箇所があります。
超簡単なあらすじ
親に愛されず、孤独で、ひねくれて、やせこけて、超わがままな子供2人が、庭で花作りをしているうちに、心身ともに丈夫になり、子供らしい明るい子になる話。
作品情報
作者:バーネット。バーネットは、『小公子』と『小公女』という有名な作品も書いている。
おもな登場人物:メアリー、ディコン、コリン、クレイヴンさん(コリンの父親)、マーサ(召使い、ディコンの姉、ヨークシャーなまり)、ベン・ウエザースタッフ(偏屈な庭師)、メドロック夫人(女中頭)
時代背景:インドがイギリス領だった頃。たぶん1909年。
補足:1909年に、’まず雑誌で連載され、その後単行本になった。そのせいか、最初はメアリーが主人公なのに、だんだんメアリーの影が薄くなり、最終章では、コリンとその父親の話になっている。
Dikconは日本ではディコンと訳されているからディコンと書いているが、本当はディキンである。
あらすじ(結末まで書いています)
わがままなメアリー
メアリー・レノックスは9歳(そのうち10歳になる)。英国領インドで暮らしているイギリス人。
金持ちのお嬢様だが、親にかまってもらえず、女中(インド人)だけが相手。女中はメアリーの言うことなら何でも聞くため、超わがままで傲慢な少女に育ちます。すぐにかんしゃくを起こすかわいげが全くない子供、それがメアリーです。
大人相手でも平気で毒づくメアリーは、見た目も相当ブスです(10人のうち10人が醜いと判定するほど醜いという記述あり)。やせこけて黄色い顔色。やせっぽちで不健康。
ある日、コレラで、いきなり両親が亡くなり、メアリーはイギリスの遠縁のおじさんに引き取られることになります。
このおじさんは、アーチボルド・クレイヴンという名で、メアリーのお父さんの妹の夫(確かそうだったと思う。まあ、血はつながっていない)。
クレイヴンさんは、イギリスのヨークシャーに住んでいるため、女中のメドロック夫人がメアリーを迎えに来ます。
メドロック夫人は、ひと目見て、メアリーが大嫌いになりますが、もちろん、メアリーだって、メドロック夫人が大嫌いです。
お屋敷に到着
汽車に乗ったり、馬車に乗ったりしているうちに、ヨークシャーのお屋敷に到着します。夜、広大なムーアを見て、海かと思うメアリーです。
メドロック夫人によると、このお屋敷は広大で、部屋が100以上あるとのこと。しかも、そのほとんどに人が住んでいません。
実際、この屋敷に住んでいるのは、クレイヴンさん(たいてい家にいない)と、息子のコリン(この子の登場はもうちょっとあとで、この段階では、メアリーはコリンのことは知りません)。メアリーも入れれば、3人だけ。
あとは、全員召使いです。コリンの担当医は、クレイヴンさんの親戚ですが、この家には住んでいない模様(住んでいるのかも?)。
メアリーが到着しても、おじさんは「会いたくない」と言います(ひどい)。子供が苦手なんだな、とわかります。
気さくなマーサ
翌朝、メアリーが目覚めたら、女中が、暖炉に火をおこしています。マーサは、かなり若い、思ったことはなんでもいう女中。ときどきヨークシャー訛りが出るいい人です。メアリーに怒鳴られても気にしません。
1人で服を着られないメアリーに、あきれるマーサ。
メアリー「あなたが、私つきの召使いなの?」
マーサ「あたしは、メドロック夫人に雇われているのよ。ほら、ご飯を食べてお外で遊んでおいで」
メアリー「は? 外? この寒いのに? あなたも一緒に来るの?」
メアリー「部屋にいてもやることないよ。1人で行くんだよ。私は仕事。外にはいろいろあるよ。庭とか。そういえば、10年間、誰も入ってない庭なんてのもあるの」。
秘密の庭探し
秘密の庭に興味を持ったメアリーはあちこち歩いているうちに、偏屈な庭師、ベン・ウエザースタッフに出会います。
ふと見ると、コマドリ(robin)があっちの庭の方に飛んでいきます。このコマドリはベンの友だちだそうですが、メアリーにも友好的です。
これまで、誰も好きになったことがないメアリーですが、コマドリやベン、マーサのことを気に入ります。
メアリーは、コマドリが飛んでいった先が、秘密の庭ではないかと扉を探しますが見つかりません。
秘密の庭の秘密
マーサにもらった縄跳びをしながら秘密の庭探しをするメアリー。
自分の家(子沢山の貧乏農家)や母親の話をするマーサを、メアリーは次第に好きになります。
マーサは、10年間、誰も入らない庭の秘密を言います。この庭は、もとクレイヴンさんの妻の庭で、庭で木登りをしていた妻は、木から落ちて、亡くなったのです。
妻を深く愛していたクレイヴンさんは、妻が亡くなったショックで庭を封印してしまい、鍵もどこかに埋めました。
ある時、メアリーは、屋敷のどこからか子供の泣き声が聞こえることに気づきます。
秘密の庭が見つかる
秘密の庭探しに夢中のメアリーは、外を縄跳びしたり、歩き回ったりしているうちに、だんだん健康になり、食欲も出てきます。
ある日、偶然メアリーは秘密の庭の扉と鍵を見つけ(コマドリが教えてくれたとメアリーは解釈)、こっそり入ります。中は荒れ果てていましたが、メアリーは、ちょっと雑草取りなどをしてみます。
メアリーがマーサに、「小遣いでガーデニンググッズを買いたい」というと、マーサは、弟のディコンに買いに行かせるというので、メアリーはディコンに手紙を書きます。
これまで、すべての家庭教師が、メアリーの態度にあきれて途中で逃げていたので、メアリーはあまり勉強した経験はありませんが、なんとか字は書けました。
天使のような少年、ディコン
ディコンはマーサの弟でもうすぐ13歳。
とても性格がよく、どんな動物とも仲良くなるし、動物や植物に関する知識も豊富です。
マーサから話を聞き、メアリーはディコンに会いたいと思っていたところに、当のディコンがガーデニンググッズを持って、屋敷に来てくれました。
2人はすぐに仲良くなり、メアリーはディコンに秘密の庭を見せます。
ディコンは庭を見てびっくり。すばらしい庭だったからです。この後、2人は、庭の手入れに精を出します。
寝たきりのコリン
さて、屋敷では、また誰かの泣き声が聞こえてきました。
メアリーがマーサに確認すると、風の音だとか、歯が痛い女中の誰それが泣いていると言いますが、明らかに嘘を言っています。
メアリーは、自分で声の主を探そうと、屋敷の中を探検します。メドロック夫人に、「屋敷の中をうろうろするな、あっちは行くな」と止められていましたが、メアリーは、大人の言うことなど聞かないタイプです。
そう、この子は、かなり強い子なのです。
そして、とうとうある晩、泣いていたのはコリンという少年だとわかります。
コリンは、クレイヴン氏の長男です。年はメアリーと同じ10歳。
生まれつき身体が弱いし、歩けないし、いつかせむしになるし、どうせ僕は長くは生きられない、と悲観しながら、毎日ベッドに寝たきりの少年。それがコリンです。
ただ、コリンはメアリーとは違って目が大きく、まつげがびっしりはえている、母親ゆずりのハンサムな男の子。
実は、メアリーの母も美人で、健康になってきて、たまには笑うようになったメアリーも、次第にかわいい女の子になりつつあります。
わがままで傲慢で孤独な2人は似たもの同士。お互い子供だし、コリンはメアリーが気に入ります。
コリンは、クレイヴンさんの実子ですが、おじさんは、亡くなった妻にそっくりのコリンに会うのは悲しすぎるので、コリンとはめったに会いません。
コリンを見ることはあっても、それはコリンが寝ているときだけ。
ヒステリーを起こすコリン
ある時、コリンがヒステリーの発作を起こして、大声で泣きわめきます。「僕はもう死ぬんだ。せむしになるんだ。わ~~~~っ!!!!」
メアリーは、自分もすごくわがままなのに、わがままを言う子供が嫌いです。
「何言ってるの。死ぬわけないでしょ。背中見せて。コブなんて1つもないじゃない!」(ドン!)←メアリーが床を踏み鳴らす音。
メアリーの剣幕に驚いたコリンは発作が止まり、せむしになる兆候がないとわかって一安心。この後、2人はさらに仲良くなります。
メアリーは、コリンに外の様子やディコンの動物の話などをしてあげます。
クレイヴンさんと会う
とうとう、メアリーがおじさんと会うときが来ました。おじさんは、子供は苦手だし、メアリーと格別かかわりたいとも思っていません。
だからメアリーに会うつもりはなかったのですが、偶然、道でマーサの母親に会ったとき、「メアリー嬢ちゃまに、会ったほうがいいですよ」と言われたのです。
亡くなった妻は、マーサの母親と仲がよかったので、クレイヴンさんはこの忠告を聞き入れました。
10年も前に妻が亡くなった悲しみにいまだに暮れ、自己憐憫の世界に生きているおじさんですが、メアリーにはハッピーに暮らしてもらいたいと思っています。
おじさんは、これから長い旅に出ることをメアリーに伝え、「何か欲しいものはないか」と聞きます。
メアリーは、「土地が欲しい」と答えます。
自分の土地に花やらを植えたいと言うメアリーの言葉に、妻のことを思い出したおじさんは、「使ってない場所ならどこでも好きな場所を使ってもいい」と言います。
おじさんは、旅先から、メアリーに、庭に関する本や、メアリーのイニシャルのはいったレターセットなどを贈ってくれました。
コリンを仲間に入れる
メアリーはディコンと、誰にも内緒で秘密の庭の世話に明け暮れますが、そのうちコリンも仲間に入れます。
召使いに途中までコリンの車椅子を運ばせて、秘密の庭に行くコリンとディコンとメアリー(コリンは、将来の屋敷の主なので、召使いは皆、彼の言うことを聞く)。
庭の世話をしているうちに、コリンはどんどん元気になり、とうとう立ったり、歩いたりできるようになりました。
「歩けない」と思っていたのは、ただの思いこみだったようです。
季節はめぐり、秘密の庭には、花がいっぱい咲き、秘密の花園になりました。
秘密の花園の野性味を尊重して、整えすぎないようにしたので、一方変わった美しさです。
日に日に元気になるコリンですが、歩けるようになったことは、皆に秘密にしています。
父親が帰ってきたら、歩いて行って、驚かせたいのです。
ハッピーエンド
さて、クレイヴンさんが長い旅から戻るときが来ました。
マーサのお母さんの便りに、「そろそろお屋敷に帰って、お坊ちゃまに会ってください」と書いてあったからです。
実は、マーサのお母さんは、子どもたちの信頼が厚く、秘密の花園のことや、コリンが歩けるようになったことを知っていました。
もちろん、マーサのお母さんは、他の人には秘密にしていたけれど、クレイヴンさんには、ぜひコリンを見てもらいたいと思ったので、手紙を出したのです。
クレイヴンさんは、亡き妻の「花園に来て!」という声まで聞きました。
屋敷に戻ったら、亡き妻の花園から子供たちの声や走り回っている音が聞こえ、クレイヴンさんは、不審に思います。
すると、コリンが扉をあけて、たたたっと走ってきました。
コリンを見てびっくりするクレイヴンさん。
コリンは、「父さん、僕歩けるんだ。元気になったんだよ、父さん」と言います。
明るく笑うコリンを見て、10年の悲しみが吹き飛んだクレイヴンさんなのでした。
ジェーン・エアとの相似点
私は『秘密の花園』が好きで、子供のとき、子供向けの本を読んだし、大人になってからも、原書を読み、最近、翻訳版も読み、オリジナルのオーディオブックも聞きました。
クレイヴンさんも含め、孤独で人生を投げている人間が自然の力で再生するというプロットが魅力的な小説です。
今回、オーディオブックを聞いて、『ジェーン・エア』と似ている点をいくつか見つけました。
お屋敷がヨークシャーにあること。あたたかみの感じられないお屋敷の外や中の描写。
夜、どこからともなく聞こえてくる子供の泣き声。
おしまいのほうで、クレイヴンさんが、妻の、「花園に来て」という不思議な声を聞くところ。
どれもジェーン・エアを思わせます。
さらに、メアリーという少女(女性)が、コリン(とその父親)を悲しみから救い、再生させるのも、ジェーンとロチェスターの関係に似ています。
『秘密の花園』には童話のタイトルが3つ出てきます。『巻毛のリケ』と、『赤ずきん』ともう一つは忘れてしまったのですが^^; バーネットはペローの童話や、ジェーン・エアを踏襲しているのでしょう。
***
来年は、『秘密の花園』の映像化作品を順番に見ていこうと思っています。
人気のある小説なので、アダプテーションもたくさんあります。再生する物語を見て、コロナ禍の暗い世界から、私も再生します。
最近読んだ翻訳版。読みやすかったです。
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