姉たちはシンデレラに気づかない
王子さまは、シンデレラをいちばんいい席に案内し、それから手をとって踊り始めました。シンデレラがとても美しく踊るので、周囲の人は、また、見とれました。
おいしい食事が出ましたが、王子さまは、シンデレラばかり見ていて、ほとんど食べません。シンデレラはまま姉のそばにいき、親切に話しかけ、王子様からもらったオレンジやレモンをおすそ分けしました。
姉たちは、身知らぬきれいなプリンセスに親切にされたのでびっくりしていました。
一晩目は余裕を持って帰宅した
姉たちとおしゃべりしているうちに、時計が12時15分前を知らせました。シンデレラは、人々にていねいにお辞儀をして、立ち去りました。
家にもどると、代母のところに行き、お礼を言い、次の晩も舞踏会に行きたいと伝えました。王子さまに明日も来るよう言われたのです。代母と話をしていたら、姉たちが戻ってきました。
シンデレラは、今まで眠っていたふりをしつつ、姉たちを出迎えました。
ずっと家にいたふりをするシンデレラ
姉の一人が、舞踏会で出会った美しいプリンセスの話をしました。シンデレラは、「そんなに美しい人なのですね。私もおめにかかることができるかしら。ジャヴォットさま、ふだん着ている黄色いドレスを貸してくれませんか?」と言いました。
「まさか、灰まるけに服を貸すなんて、ありえないわ。私の頭が変にならない限り」。
シンデレラは断られることがわかっていて聞いたのです。姉の服を着ることになったら、とても困ったでしょう。
次の夜、ガラスの靴を片方落としてしまう
翌日、シンデレラはきのうよりもっと美しい服を着て舞踏会に出かけました。王子さまは、ずっとシンデレラのそばにいて、やさしく話しかけていました。
とても楽しかったので、シンデレラはつい時間を忘れてしまい、時計が12時を知らせ始めたとき、まだ11時だと勘違いしていました。
12時だと気づいたシンデレラは、立ち上がり、牝鹿のようにすばやく走り去りました。
王子さまは、あわてて追いかけましたが、間に合わず、シンデレラが落としていったガラスの靴の片方を大事そうに拾いました。
あらすじ、次回に続きます・・・・
元の文章はこちらを参考にしています⇒ Cendrillon ou La petite pantoufle de verre par Charles Perrault (1697)
今回のポイント
誰もシンデレラに気づかない理由
一晩目の舞踏会では、シンデレラは、ずっと姉たちとおしゃべりをしていましたが、姉たちは、目の前にいる美しい女性がシンデレラだとは気づきませんでした。
いつも一緒に暮らしているというのに。
アニメ『シンデレラ物語』でも、シャルル王子は、自分が踊っている美しい女性が、過去半年かけて、仲良くなったサンドリヨンだと気づきません。
なぜでしょうか?
おとぎ話だから、といってしまえばそれまでですが、それぐらいシンデレラ(サンドリヨン)が美しい身なりをしていたからでしょう。
シャルル・ペローの時代のフランスでは、着ているものはその人の身分をしっかり表していたのです。財力がなければ、美しい服を着ることはできません。
つまり、ふだん身なりが汚い人が、いきなりきれいな格好になるなんて、ありえなかったのです。
それは、どんな絵でも、一人だけド派手な服を着ているルイ14世を見ればわかります。さらに、ルイ14世は、たとえ、家臣に美しい服を着ることができる経済力があっても、自分と似たような格好をすることは許さなかったはずです。
ジャヴォットという名前の姉
シンデレラは、姉の一人に、「ジャヴォットさま( Mademoiselle Javotte )、ふだんお召しになっている黄色い服を貸してくれませんか?」と頼みます。
たぶん、 ジャヴォットは、よりいじわるな上の姉のほうだと思います。
というのも、この姉は「灰まるけ( Culcendron キュサンドロン)に服を貸すなんて、あるわけないじゃん」と答えているからです。
下の姉ならば、シンデレラのことを、サンドリヨン(シンデレラ)というニックネームで呼んだでしょうし、多少はやさしい性格なので、もしかしたら、服を貸す、といったかもしれません。
そうなると、シンデレラはかえって困りますから、絶対貸すはずのない上の姉に頼んでみたのでしょう。
この部分の姉たちとのやりとりを読むと、シンデレラが、舞踏会に行けて、しかも皆の注目の的になり、あまりに幸せでやや調子にのっていることがわかります。
尚、この物語で、人の名前が出てくるのは、この ジャヴォットだけです。呼びかける必要があったので、名前が使用されたと思われます。
続きはこちら。
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