青ひげ(シャルル・ペロー)のあらすじ

暗闇のなかのお屋敷 その他の物語

シャルル・ペローの童話集、Histoires ou Contes du temps passé (1697)のなかから、青ひげ(La Barbe bleue)のあらすじを紹介します。 

青いひげをもつ男

昔むかし、あるところに、街にも田舎にも大きな屋敷をいくつかもち、すばらしい家具調度も馬車を所持している男性がいました。しかし、彼のひげは青かったので、見た目が醜悪で恐ろしいため、女性は寄り付きませんでした。

青ひげは、近所に住む、身分の高い姉妹のどちらかと結婚したいと申し入れましたが、青いひげがネックになって姉妹はお互いにゆずりあっていました。

しかも、青ひげは過去に結婚歴が何度もあり、前の奥さんたちがどうなったのか誰も知らないのも、結婚する気になれないポイントでした。

青ひげは、仲良くなるために、姉妹とその家族や友人を別荘の1つに招いて1週間楽しく過ごしました。妹は、この滞在中に、青ひげに慣れ、わりといい人だと思い、結婚することにしました。

出張に出かける青ひげ

結婚して1ヶ月たったころ、青ひげは仕事で6週間出かけるから、留守中は好きにしていいよ、と妻に言いました。そして妻に鍵束を渡し、小さな鍵について、こう言いました。

「これは階下の廊下のはずれにある小部屋の鍵だ。どの部屋も自由に入っていいが、この小部屋だけは入ってはいけない。いいか、絶対に、絶対にだめだぞ。もし入ったら、私は怒るしかないからね」。

「わかりました。言われたようにします」。

青ひげが出かけると、友人たちが押しかけてきました。皆、豪華な家の中を見たいとうずうずしていたのですが、青ひげがいるあいだは怖くて来られなかったのです。

皆で家中の部屋や戸棚、倉を見てみると、どれもこれも美しくてすばらしい物が入っていました。

誘惑に負けた妻

友人たちは、こんなすばらしい家に住めるなんて本当にうらやましいわ、などと言いましたが、妻は小部屋の中を見たくて、気もそぞろでした。

そしてとうとう、こっそりと小さな隠し階段をおりてゆきました。あまりに急いでいたので、2~3度、首の骨を折るところでした。

妻は小部屋の前で一瞬立ち止まって、青ひげの言葉にそむくとまずいことになるかも? とちらりと思いましたが、結局、誘惑に負けてふるえる手で鍵を差し込み扉を開けました。

窓がしまっていたので、最初は、暗くて中の様子がよくわかりませんでした。けれども、そのうち、床に血がたまっているのが見えました。その血だまりに、壁に並んでぶらさがっている女性の死体が映っていました。

青ひげが、結婚して、次々に殺した女性です。恐怖に凍りついた妻は、うっかり鍵を落としました。少ししてから、妻は気を取り直し、鍵を拾って扉を閉め、自分の部屋に戻って、気を落ち着かせようとしましたが、無理でした。

青ひげが帰ってくる

ふと見ると鍵に血がついています。ふいても、石けんで洗っても、磨き粉でごしごしこすっても取れません。実はこの鍵には魔法がかかっていたので、血が消えたと思っても、別のところに血がつくのです。

その晩、青ひげが、帰ってきました。 途中で 用事が片付いたという手紙を受け取ったから、行かなくてすんだ、と言って。

翌朝、鍵束を返すように言われたときの妻の様子を見て、青ひげは、留守中、何があったか、すぐにわかりました。

「なぜ、この鍵に血がついているんだ?」

「知りませんわ」

「知らないって? 私はちゃんと知っている。おまえはあの小部屋に入ったんだ! いいだろう、どうぞ、お入りください、奥さま。そして、あの婦人たちのそばに、自分の席を見つけるがいい」

妻は夫の足元に見を投げ出し、泣きながら許しをこいましたが、青ひげは、冷たく言い放ちました。

「奥さま、今すぐ死ぬんだ」

死を前にした7分間

「それならば、死ぬ前に、神さまにお祈りする時間をくださいませ」。

「7分とすこし(15分の半分)待ってやる。それ以上は、一瞬たりとも待たないぞ」。

妻は1人になると、姉のアンヌを呼び、塔の上にあがって兄たちが来ないか、見てくれるよう頼みました。きょう来る約束をしていたのです。「兄たちが見えたら、急ぐように合図を送って」。

妻は泣きじゃくりながら、塔にむかって叫びました。

妻「アンヌお姉さま、何も見えませんこと?」

姉「おひさまがほこりを舞い上がらせているのと、みどりいろの草しか見えないわ」

青ひげは短剣を持ち、下から大声でいいます。

青「はやくおりてこい。さもなきゃ、こっちからあがっていくぞ」

妻「ちょっと待ってください・・・・アンヌお姉さま、何も見えませんこと?」

姉「ほこりと草だけよ」

青「はやくおりてこんか、こっちからあがっていくぞ」

妻「い、今、いきます・・・アンヌお姉さま、何も見えませんこと?」

姉「土煙が見えるわ」

妻「お兄さんたち?」

姉「いいえ、羊の群れだったわ」

青「おりてこないのか?」

次に妻が姉にきいたとき、遠くに兄たちが見えたので、姉は早くくるよう合図をしました。

青ひげが大声でどなったので、妻は夫の足元に泣き崩れました。青ひげが妻の髪をつかみ、短剣で首を切ろうとしたそのとき、軍人である兄2人がやってきて、剣で青ひげを殺しました。

青ひげには跡継ぎがいなかったので、妻が財産をすべて相続し、一部を姉に使って結婚させ、一部を兄たちにつかって隊長にさせ、のこりの財産をもって立派な人と結婚しました。新しい夫は、青ひげとのいやな思い出を忘れさせてくれました。

教訓

好奇心はとても魅力がありますが、あとで支払う代償は大きいですよ。毎日、よくあることです。女性は不愉快に思うかもしれませんが、それはささいな楽しみにすぎず、いったん手にいれると、魅力が失せます。そして、いつもとても高くつくのです。

もう1つの教訓

多少考えがあり、世の中のことを知っている人なら、この話は昔のことだとわかるでしょう。こんなおそろしい、できないことを要求する夫は今はいません。たとえ妻に不満があったり、やきもちをやいていたとしてもね。

みな、妻のそばでおとなしく糸を紡いでいます。ひげの色が何色であっても、どちらが妻でどちらが夫なのか、なかなか見分けられません。

原文はこちらを参照しました⇒ La Barbe bleue

サスペンスフルな童話

あらすじではかなりはしょっているので、あまりドキドキしないかもしれませんが、原文では、妻が鍵を渡すところや、最後の兄を待っているシーンは、とてもサスペンスがあります。

鍵についた血がいったん消えても、別のところにまた出てくるのもおそろしいです。

やはり、ペローは、かなりのストーリーテラーだと思います。

それと、教訓は毎回おもしろいですね。くすくす笑ってしまいます。

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