フランスの中世の伝承話に登場するメリュジーヌの話を紹介します。
メリュジーヌは、上半身は美女、下半身は蛇の妖精です。
困ったことが起きた
真夜中、コロンビエールの森で、ひづめの音が鳴り響いていました。それは、若きレイモンダンの馬が大急ぎで駆け回る音。
レイモンダンは、狩りをしているとき、あやまっておじであるポワティエ伯を殺してしまったのです。
彼は、恐怖と罪の意識で混乱していました。おじを殺したことが知られたら、絞首刑です。
突然、若い女性の笑い声がしました。ふと見ると、泉のそばに、びっくりするほど美しい3人の少女がいます。そのうちの1人のメリュジーヌが、彼のそばにやってきました。
「騎士のお方、どうして、そんなにおつらそうなのでしょう?」
メリュジーヌが助けてくれた
メリュジーヌはレイモンダンの話をじっと聞き、彼こそ自分の呪いを解いてくれる人だと悟りました。
実は、メリュジーヌは、毎週土曜日、足が大蛇になる呪いをかけられていたのです。
これは、自分の身を守るために、彼女が、父親を山の洞窟に閉じ込めたとき、母親に課せられた罰でした。
メリュジーヌの心の声:もし、彼が私と結婚して、彼が、土曜日の私の悲惨な姿に驚かないでいてくれたら、呪いは解け、私はほかの人のように幸せに暮らせるわ。
メリュジーヌはやさしい声で、レイモンダンをなぐさめ、彼を助けると約束しました。
「私と結婚してください。そうすれば、私はあなたの罪をなかったことにするし、あなたを金持ちで強い男にしてさしあげます。
その代わり、土曜日は、決して私を見ないことと、私が何を隠しているか探らないことを約束してください」。
メリュジーヌの美しさとやさしさに魅せられたレイモンダンは、ためらうことなく、彼女と結婚しました。
幸せな結婚生活だったが
その後、メリュジーヌは約束を守りました。
妖精の魔法で、毎晩、夫のために大きな建物をぼんぼん建てました。そのうちの1つは、2人が出会った泉のそばにあるリュジニョンの城です。
メリュジーヌは息子を10人生みました。そのうちの8人は、微妙に奇形で、子どもたちがふつうの人間から生まれたわけではないことを物語っていました。でも、子どもたちの運命は恵まれた安定したものでした。
レイモンダンとメリュジーヌの富と幸せは人々の評判になりました。
でも、レイモンダンの兄のフォレ伯が、2人に嫉妬しました。
ある日、フォレ伯は、2人のもとを訪れたとき、メリュジーヌがこっそり、2重の鍵のある部屋へ忍んでいくのを見ました。
「おまえはとんでもないめくらだな。隠し事をする妻は、裏切る妻だ。毎週土曜日、妻がほかの男と会っているのがわからないのか?」
フォレ伯は、少しずつ、レイモンダンに妻に対する疑いの気持ちを植え付けていきました。
「もし、兄の言っていることが本当だったら? 彼女が約束してくれた富は、裏切りを隠すためのものだったとしたら?」
約束を破ったレイモンダン
ある土曜日、疑いが頂点に達したレイモンダンは、毎週メリュジーヌが閉じこもる部屋に行き、どきどきしながら、ドアに耳を当てて中の様子をうかがいました。
でも、妻のやさしい歌声しか聞こえません。
レイモンダンは短剣で、ドアに小さな穴を開け、大きく息を吸ったあと、穴から中をのぞきました。
「なんということだ! 私の妻は大蛇だ!」
その瞬間、メリュジーヌはドアにある穴に気づきます。
レイモンダンが私を裏切った。
目に涙をいっぱいためて、メリジューヌは絶望の叫びをあげながら、窓から身を投げました。変身した姿を誰かに見られたら、永遠に上半身が人間で下半身が蛇のままの姿でいなければなりません。
この日から、メリュジーヌの財産の持ち主が変わったり、家族の死が近づいたりするたびに、彼女が嘆き叫びなたら、この地の上空を飛んでいるそうです。
☆今回のお話は、こちらの動画を参考にしました⇒Parler de la légende de Mélusine en classe de FLE | Enseigner le français avec TV5MONDE
教訓:約束はちゃんと守ろう
妻が「見ないで、のぞかないで」と言っているのに、夫がのぞいて不幸な結末になる話はよくあります。
これもそういう話の1つですね。
重要なのは、嫉妬しないこと、妻を信じること、そして、何より約束を守ることです。
それから、助けてもらった恩を忘れないこと、また、人は、嫉妬心から、あることないことうわさすることも、覚えておきたいポイントです。
メリュジーヌがあまりに美しいから、レイモンダンは、疑ってしまったのかもしれません。
詳しく知りたい方はこちらの本をどうぞ⇒西洋中世奇譚集成 妖精メリュジーヌ物語 (講談社学術文庫) | クードレット, 松村剛 | 歴史学 | Kindleストア | Amazon
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