赤ずきん(2011)の感想。

雪の中の赤ずきん ペロー童話

グリム童話(?)の『赤ずきん』を下敷きにした(しかし話は全然違う)映画、Red Riding Hood を見ました。邦題は『赤ずきん』です。

赤ずきん・予告編 1分22秒

基本情報

  • 監督:キャサリン・ハードウィック(『トワイライト〜初恋〜』 を監督した人)
  • 制作:アメリカ・カナダ
  • 言語:英語、上映時間は100分。
  • 主演:アマンダ・サイフリッド(ヴァレリー/赤ずきん)、シャイロ・フェルナンデス(ピーター、ヴァレリーの幼なじみで2人は恋仲、きこりで貧乏)、マックス・アイアンズ(ヘンリー、親が決めたヴァレリーの婚約者、金持ち、仕事は鍛冶屋)、ゲイリー・オールドマン(ソロモン神父)、ルーカス・ハース(オーガスト神父)、ビリー・パーク(ヴァレリーのパパ)、ヴァージニア・マドセン(ヴァレリーのママ)、ジュリー・クリスティ(ヴァレリーの祖母)
  • 役者の名前をたくさん書き連ねたのは、脇役(最初の3人以外)の配役が(無駄に)豪華だと思ったからです。味のある人たちを使っているわりには、活かしきれていません。
  • マックス・アイアンズはジェレミー・アイアンズの次男で、お母さんはアイルランドの女優、シニード・キューザック。彼はお母さん似ですが、2枚めの俳優です。
  • おばあさん役はジュリー・クリスティ。この方はイギリスの女優でオスカーを取っています。年をとってもきれいです。
  • 童話の『赤ずきん』じゃなくてもよかったと思うシナリオ。途中で、「おばあさん、どうしてそんなに大きな口なの?」みたいな、赤ずきんとおばあさんが問答するシーンがありますが、これは、ヴァレリーの夢の中のできごとで、赤ずきんふうにするためにだけに入れたような気がします。
  • ジャンルはロマンス、ホラー、またはダークファンタジー。

あらすじ

時代は中世あたりで、場所は Daggerhornという名前の村。

美しい娘ヴァレリーは幼なじみのピーターと愛し合っていますが、親が勝手に金持ちの息子、ヘンリーとの婚約を決めてしまいます。ヘンリーは昔からヴァレリーが好きでしたが、ヴァレリーは、ヘンリーのことなんてほとんど知らないようです。

ピーターとヴァフェリーが駆け落ちする相談をしていたら、突然オオカミのうなる声が聞こえます。

近くの森には凶暴なオオカミが住んでいて、最近、人間を襲うようになりました。

オオカミが村に出てくるタイミングは決まっていて、Blood Moonと呼ばれる時期です。満月のときでしょうか? 今がその時期みたいです。

「オオカミだわ!」とヴァレリーとピーターが、村人たちのところへ行くと、殺されたのは、ヴァレリーの姉(たぶん)、ルーシーでした。このシーン、予告編にちらっと出てきますが、凶暴なオオカミに襲われたわりには、ルーシーの身体に傷も血もついていません。

村人たちはオオカミ退治に行き、1頭しとめますが、オオカミ退治の専門家らしい、ソロモン神父が部下を連れてにぎにぎしくやってきて、「それはただの灰色オオカミだ」と言います。

それでも村人たちが、「オオカミを退治した!」とお祝いをしていたら、またオオカミがやってきて、ヘンリーの父をはじめ、数人が殺されます。

ロクサーヌ(友達)と一緒にいたヴァレリーのところにも、オオカミがやってきて、「村から出て、私といっしょに行こう」と言います。ヴァレリーはオオカミと話ができるのです。それを見ていたロクサーヌは、ヴァレリーは魔女だと思いますが、「誰にも言わないわ」と約束します。

ヴァレリーはオオカミが茶色い人間の瞳をしていることに気づき、それ以後、いったい誰がオオカミなのか、疑心暗鬼になります。

ソロモン神父は、「ほら、見ろ。私はちゃんと警告したぞ、警告したぞ、オオカミは、村人の中にいる!」と宣言したので、村人たちも、誰がオオカミなのか、疑心暗鬼になります。

ソロモン神父は、何の権限があるのか、オオカミを探すために、家宅捜査を始めたり、ヴァレリーの友達のロクサーヌの弟でクロード(自閉症みたいでめったにしゃべらない)が、タロットカードを持っていたという理由だけでつかまえて、「誰がオオカミなのか言え!」と尋問します。

タロットカードは黒魔術に関係があるから、クロードはつかまったのです。

クロードがおびえて何も言わないので、業を煮やしたソロモン神父は、かまどの上にあるゾウの形をした鉄の入れ物にクロードを閉じ込め、下から火をたいて拷問します。

なにこれ? ソロモン神父、むちゃくちゃすぎます。

クロードの姉、ロクサーヌはソロモン神父のところへ行き、クロードを引き渡してもらうかわりに、ヴァレリーが魔女だという情報を伝えます。友達を売ったわけです。

しかし、この時点でクロードは死んでいます。彼も、かまどの上にある鉄の入れ物の中でもだえていたわりには、傷ひとつない死体です。

ソロモン神父はヴァレリーを捕まえ、魔女裁判をしたあと、牢屋に閉じ込め、タイミングを見計らい、ヴァレリーを使って、オオカミをおびきようせようとします。

このとき、ヴァレリーは赤いずきん(おばあさんが作ったずきん)を着せ、変なおめん(毒ガスを吸わないためのマスクみたいな感じ)をかぶせて、広場に座らせます。

ふだんは利害が対立しているピーターとヘンリーですが、共にヴァレリーを好きなので、2人で協力して、彼女を救出しようとします。

見どころは美しい赤ずきんか?

あらすじを読むとわかるでしょうが、奇妙なプロットで、ホラーだと思ってびくびくして見ていましたが、全然こわくありません。

村人たちの中にオオカミがいる、と、皆がお互いを疑いの目で見る設定なのに、心理的にもあまり怖くなりません。

この映画の見どころはすその長い赤いずきんかもしれません。最後のほう、まっしろな雪の中で赤がよく映えます。ふだんでも丈の長いずきんですが、ときどき、一反もめんのように、丈がのびて、画面の中を横切ります。

主演女優は、目が大きくてきれいな人で、赤いずきんがよく似合います。童話の赤ずきんは、子供ですが、彼女は16歳ぐらいの設定でしょうか?

ロマンスでもあるので、ティーンエイジャーにしたのです。

不自然なセリフと展開

ときどき不自然なセリフと展開があってひっかかります。詳しく書くとネタバレしてしまうので、1つだけ紹介します。

まず私がおかしいと思ったのは、ルーシーがオオカミに殺されて、家でとむらい(お通夜?)をしていたら、ヘンリー(親の決めたヴァレリーの婚約者)とその父親がやってくるシーンです。

このとき、ヴァレリーはヘンリーを無視して、さっさと上にあがってしまいます (はしごをのぼっていくと、そこが寝室になっている) 。

そこへ母親がやってきて、「ヘンリーは弔問に来てくれたのよ。話ぐらいしなさい」と言います。

ヴァレリーは、「私、彼のことろくに知らないわ」と言うと、「私もね、おまえの父さんとの結婚は親が決めたのよ。私にはほかに好きな人がいたの。でもね、私は父さんを愛するようにしたわ。父さんは私にルーシーとおまえという素晴らしい娘をくれたの」と、親の決めた結婚でも幸せになれたようなことを言います。

ここは母親が愛情をこめて娘に語りかけているように見えます。

ところが、その直後、ヘンリーの父親がオオカミに殺されたとき、ヴァレリーの母親が、すごく悲しんでいるのを見て、ヴァレリーは、「ママが好きだった人って、ヘンリーのお父さんだったのね。そうでしょう?」と言うと、母親は、「そうよ。実は、ルーシーは、ヘンリーの父親(名前を失念)との間にできた子供なのよ」と言うのです(しかも道端で)。

は? 「父さんは、2人の娘をくれたわ」と言ったのは嘘だったのですね。私がお母さんの立場で、そんな秘密を持っていたら、娘に、「親の決めた結婚でも幸せになったわ」なんて、口がさけても言えません。

それと、ヴァレリーの親がヘンリーとの結婚話をすすめたのは、ヘンリーの家が金落ちだからです。ヴァレリーの父親は木こりで、貧乏という設定です。

ヴァレリーの母が、ピーターに、「木こりのあんたがお金のないのはよくわかってる、わたしの夫も木こりなんだからね」というシーンがあります。

ヴァレリーの母の両親は、金持ちの鍛冶屋(ヘンリーの父)との結婚をあきらめさせて、わざわざ貧乏な木こりと結婚させたということなのでしょうか?

こんなふうに、首尾一貫しないセリフと展開が続くのですが、この映画は、そういうことはあまり気にしていないようです。

ヴァレリーとピーターとヘンリーの三角関係や、オオカミ退治のアクションを見せる映画なのかもしれません。

そうした部分を楽しむことができれば、まあまあおもしろい映画と言えるでしょう。

最後にオオカミの正体がわかっても、何の驚きも、カタルシスみたいなものもなかったのですが、一応、オオカミの正体は知らないまま(つまりネタバレを見ないで)見たほうがいいです。

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